20代無職の男が大阪・釜ヶ崎で見出した希望 幸せになれる夏祭りと変わっていく街並み

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釜ヶ崎には、野宿生活をする方たちも多く暮らしている。公園に小屋を建てている人もいるし、西成労働福祉センターの周辺で段ボールや布団でその日限りの寝床を作って眠る人も多い。釜ヶ崎では、野宿生活者のために頻繁に炊き出しが行われている。

野宿生活をする人たちも多い(筆者撮影)

「祭りの日は、炊き出しがちょっと豪華になるんです。一般の人もおカネを出せば食べられるので、炊き出しを食べるチャンスです。

ホームレスさんのための炊き出しだから普段は食べられませんけど、おカネを出して食べるなら気兼ねなくていいのでうれしいですね。カレーを食べましたけどおいしかったですね」

祭りの間は、釜ヶ崎の限定通貨“カマ”が発券される。ボランティア団体が普段の倍近い値段(通常1キロ100円前後)で空き缶(アルミニウム)を買ってくれるため、空き缶を集めて生計を立てている人もお腹いっぱい食べることができる。

相撲大会の出場者はかなりの猛者も

そんな夏祭りの中でいちばん人気があるのが「相撲大会」だ。三角公園に畳を敷いて、そこで相撲をとる。

挙手制で手を上げた人同士が対戦する。それで5連勝したらいったん優勝で横綱。横綱が3人出たら、決定戦をして、大横綱を決める。それがお決まりのルールだ。

「参加者はお酒でフラフラのオッチャンもいるし、ごっつい身体をした手配師や、全身入れ墨のカタギじゃなさそうな人もいます。最近は一般参加の格闘技をやっている人も増えました」

B・カシワギさんも毎年参加していた。

「僕は身体が大きいので、やっぱり派手に勝つことを心掛けたいんですよね。デブはヒールだと自覚しています!!(笑)」

派手に勝とうとすると、なかなか勝ち抜けなかった。初年度は2回戦でアッサリ負けた。

2年目は5連勝して横綱になったが「優勝戦くらいは地味に押出しで勝ってもいいか……」などと欲を出したら、それが裏目に出て負けてしまった。

5連勝で横綱にはなれるんだけど、大横綱にはなれない年が続く。

出場者はかなりの猛者もいた。ある60歳超の労働者は、B・カシワギさんや、格闘技をやっている屈強な若者を倒して優勝したという。

「肉体労働をしてるオッチャンたちはみんな良い身体してますよね。特にそのオッチャンは、組み相撲になると足に根が生えてるみたいに異常に重たくて。重心の置き方の違いなんですかね? とにかくめちゃくちゃ強かったです。」

強敵に阻まれ優勝を逃しながらも8年間毎年チャレンジをし続けた。そして2013年、念願の大横綱になることができた。

「相撲に参加して街になじんだなって思いましたね。オッチャンらめちゃ話しかけてくれてうれしかったですね。ボランティアの女の子に

『相撲強かったですね!!』

なんて声かけられたりして。モテ期が到来したのかと勘違いしました(笑)」

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