20代無職の男が大阪・釜ヶ崎で見出した希望 幸せになれる夏祭りと変わっていく街並み

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

普通の夏祭りとは全然違う、街と人々からあふれる熱量に圧倒された。

やぐら(筆者撮影)

「のど自慢大会があるんですけど、歌いたい人が前に出て、アカペラで歌うだけなんです。舞台に上がれば誰でも主役になれる。ステージの本質をつくライブだと思います」

ある年にはヤクザ風ファッションのお兄さんがアコースティックギターを持って舞台に上がった。そして、

「友達が死んだので、その歌を歌います!!」

と言って歌を歌いだした。

「『鉛の刃がその身に突き刺さり~♪』という歌詞の歌を感情込めて歌っていました。釜ヶ崎は暴力団の事務所の多い場所ですから、彼の友達は暴力団員で撃たれて亡くなられたのかな? なんて想像させられました」

暗黙のルールもある

舞台には誰でも上がれるし、壇上で酔っ払って正体をなくす人もいる。一見、何でもありみたいな雰囲気に見えるが、暗黙のルールもあるという。

「知り合いの男の子が井上陽水の『傘がない』を歌ったんですが、すごいオッチャンに怒られちゃって。壇上から追い返されちゃったんです」

『傘がない』は歌い出しで、若者の自殺に触れる。「釜ヶ崎で“死”について軽々しく触れるんじゃない!!」とオッチャンたちは思ったのかもしれない。

またバンドが演奏するときも、中指を立てるポーズは嫌がられる。関係者が、

「何うちのオッチャンらに、指立てんねん」

と怒り出すこともあるという。

「誰であろうと、『釜ヶ崎を馬鹿にするようなことは許さん』っていうムードがありますね。祭りには大物歌手が来るときもあるんですが、たまにちょっと揉めることもあるみたいです」

夏祭り中は、さまざまなイベントが開催されるが、B・カシワギさんがちょっと地味だけど好きなのは「書道コーナー」と「写真コーナー」だ。

書道コーナー(筆者撮影)

「書道コーナーは参加者がその場で気ままに書いた字をたくさん飾るんです。元気いっぱいな文字で『意気消沈』って書いてあったりして笑えますね。

写真コーナーはカメラマンが希望者の写真を撮ってくれて、その写真を外に張り出してあるだけなんですが、みんな本当に表情豊かです。見ているだけでこちらが元気になるくらいです。すばらしいですね」

「綱引き」は阪神ファンとそれ以外のファンが別れて戦う。阪神ファンのほうが多いため、たいていは阪神ファンが勝つ。

三角公園を斜めにロープを渡して引き合う。

「綱引きって勝負がつくと、わ~って勝ったほうに人が流れるじゃないですか。そのままみんな路上にバラバラバラ~って転げ出て車にひかれそうになって、危ないんです(笑)」

次ページ祭りの日の炊き出しは
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事