20代無職の男が大阪・釜ヶ崎で見出した希望 幸せになれる夏祭りと変わっていく街並み

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夏祭りは毎日最後に盆踊りを踊って終わる。

「普通の盆踊りと違って、櫓を中心に3つくらい同心円ができるんです。それぞれ最初は右回りだったけど途中から反対回りになって、またもとにもどってと、それぞれ自然の流れで回るんです。

踊りも気ままで誰かうまい人がいたら、それをみんなまねして歌ったり、急にオッサンが逆流して激しく踊ったり。ホームレスのオッチャンらに、若い子らに、新世界のオカマさんらに、みんなでグルグルと踊る。とにかくメチャ自由なんです」

「今を楽しもう」というプラスエネルギー

B・カシワギさんが釜ヶ崎に来るキッカケは夏祭りだったが、それからは頻繁に通うようになった。

普段の三角公園(筆者撮影)

「夏祭りには人が集まりますが、普段の釜ヶ崎も良いですよ。とにかく街を歩いて眺めているだけで飽きません」

病院の前に並ぶ順番待ちのオッチャンらが酒を酌み交わしていたり、交番の前でオッチャンが警察官にデカイ声で怒鳴っていたり……まるで一コマ漫画みたいな情景が毎日繰り広げられているという。

もちろん良い点ばかりではない。現在は取り締まりが厳しくなりずいぶんと減ったが、過去には覚醒剤を売っている売人がたくさんいた。

「当時は筋沿いに10人単位で売人が立ってました。もちろん売っているということは、買う人もいます。ホームレスのオッチャンの中にも、普段はいっさいおカネを使わずに全部貯めて、月に何回かシャブを買うのだけが楽しみという人もいました」

お酒の自動販売機の前ではベロベロに酔って倒れている人が何人もいる。けんかは日常茶飯事で怒鳴り合いくらいでは誰も気にもとめない。

違法ギャンブルも盛んで、いまだにノミ行為をしているお店もある。以前は三角公園にはチンチロリンが出ていた。違法ギャンブルは当然、カタギではない人が取り仕切っている。怖い面相の人たちが通り行く人たちににらみをきかせている場面もよく見た。

「どこそこで人が死んでいた」

「あそこのドヤで殺人があった」

などという物騒な話もよく耳にする。

昔に比べて回数は減ったし、規模も小さくなったが、今でも暴動が起きることもある。

衛生面でも問題があり、現在でも結核や赤痢が流行する。

そんな怖い一面のある釜ヶ崎だが、B・カシワギさんはそれでもやっぱり釜ヶ崎が好きだという。

「なんで釜ヶ崎が好きなんかな~と考えてみるんですが……。

僕がお店の経営をはじめる前、20代の後半の頃。定職もなくて、毎日毎日漠然とした不安の中を生きていたんですよ。自殺するほど落ち込んではいなかったですけど、気持ちは晴れていなかった。いつも少しだけ不幸だったんですね。

そんな気持ちの中、ある暑い日に釜ヶ崎に1日いたら、なんだかすがすがしい気持ちになったんですよ。

釜ヶ崎では、家庭を捨てて、名前を捨てて、帰る家もないオッチャンたちが、とても幸せそうにお酒を飲んでる。

オッチャンたちが幸せなら『おカネがない』だの『デートを断られた』くらいの哀しみしかない僕が、不幸になっちゃいけないじゃないか。幸せにならなきゃダメじゃないか……と思ったんですよね」

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