20代無職の男が大阪・釜ヶ崎で見出した希望 幸せになれる夏祭りと変わっていく街並み

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「置かれた環境」という点だけ見れば釜ヶ崎の野宿生活者の人たちは不幸なのかもしれない。ただ彼らからは「今を楽しもう」というプラスエネルギーを感じるという。

「自分より持たざる者を見て『自分はまだマシだ』って安心するんじゃなくて『持たざる立場なのに、幸せでいる人たち』を尊敬すべきなんだと思います。

釜ヶ崎という街は、そしてそこに住むオッチャンたちは、本当に僕の励みになります」

街が大きく変わっていくのは寂しい

そんな釜ヶ崎だが、ここに来てずいぶん変化しているという。

街並み(筆者撮影)

わかりやすい所では釜ヶ崎周辺にホテルが急増している。今まではマンションだった場所がホテルに変わるケースも多い。

これらの多くは外国人向けだという。

「中国人をはじめ外国人の観光客はここ数年激増していますね。

関西空港に到着した外国人の多くが京都の伏見稲荷に行くそうです。赤い鳥居がどこまでも続いていていかにも日本的ですからね。そして、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに遊びに行く人も多いです。

釜ヶ崎の最寄り駅である新今宮駅は、関西空港、京都、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと全部1本で行けるんです。これが釜ヶ崎のホテルの人気の秘訣ですね」

大手リゾートグループが釜ヶ崎に目をつけ、釜ヶ崎内の長らく空き地だった場所に、巨大な施設を建てるともいわれている。

今までの「危険な街」というイメージを払拭するためか、テレビ番組や雑誌で西成のグルメなどを紹介することも増えた。

今までは住人が気軽に利用していた店も、行列に並ばないと食べられなくなった。

長らく街の主人公であった日雇い労働者の仕事は激減した。

あいりん労働福祉センター(筆者撮影)

釜ヶ崎の象徴的な建物だったあいりん労働福祉センターも解体、一時移転されることが決まった。早朝から日雇い労働者が集まり、求人活動をするおなじみの光景も変わっていくだろう。

簡易宿泊施設を利用する人も労働者は減り、代わりに外国人観光客や、福祉アパートとして利用するお年寄りが増えた。

ユーチューバーは釜ヶ崎の様子を全世界に動画を配信し、若者たちはせんべろ(1000円でベロベロになれるお店)のお店を求めて街に訪れる。昔はほとんど見られなかった、女性の姿も頻繁に目にするようになった。

夏祭りの参加者も一般の人たちが増え、相撲も格闘技経験のある若者や外国人が活躍するケースが増えた。

「街が大きく変わっていくのは正直寂しく感じます。ただそれも時代の流れですよね。僕が釜ヶ崎に来るようになった頃だって、その前の世代から見たらずいぶん変わっていたんでしょうし。

とにかく、今は釜ヶ崎がどうなっていくのか、見届けようと思ってますね」

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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