――指揮者大野和士に対する期待には芸術監督としてどう応えますか。
指揮者の選択ポイントは演目に対する適性ですね。オペラは、歌い手で聴かせる作品と、しっかりした指揮者がいないとまとまらない作品とに分けられます。
たとえばワーグナーのような作品ではきっちり手綱を引くことのできる指揮者を選ぶ必要があるということです。今回のプロダクションにおいて、アッシャー・フィッシュ以外は、新国立劇場初登場の指揮者、そして私自身がよく知っている指揮者ばかりを招聘します。伸び盛りの若い指揮者やベテランをバランス良く起用することを決めました。
私自身の出番については、まず、2019-20年に東京都と新国立劇場が共同制作で行うオリンピックに向けたイベント「オペラ夏の祭典」の「トゥーランドット」と「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を引き受けます。そして私自身が提唱した日本人の委嘱作品については責任をもってやっていきたいと思っています。
それ以外には、この20年の間に何回も上演されているレパートリーを、1シーズンに1作か2作ぐらいの割合で作り変えていかなければならないと思っているので、その新演出についても自分が指揮をするといった感じでしょうか。それ以外にまだやられてないものもありますね。
たとえば20世紀の重要なオペラなどはもっとレパートリーの中に入ってきていいと思います。21世紀の作品の中にも古典となりうる名作もあります。それらが手付かずなのはとても残念。しかしその前に20世紀の作品や19世紀の作品でまだやられていないものを手掛けることが必要です。たとえばロッシーニの「ウィリアム・テル」などは本当にいい作品です。
まさにケントリッジは魔術師
――新シーズンのプロダクションの中で初心者にお薦めの作品はどれでしょうか。
ウィリアム・ケントリッジ演出の「魔笛」。これは本当にスペシャルです。3D効果のある舞台なので、思わずのけぞるような体験ができますよ(笑)。まさにケントリッジは魔術師です。
その次の「カルメン」も初心者が間違いなく楽しめる演目です。そしてバルセロナ・オリンピックの開会式を20代で演出したアレックス・オリエによる「トゥーランドット」。こちらは1人の人間の表と裏という考え方に基づいてトゥーランドット姫を描くという演出がものすごく面白いのです。今まさに視覚的な技術によってオペラが復活してきている時代だと言えるでしょう。
演目の話になると目の輝きが変わリ、身を乗り出すようにして話し出すあたりがまさに第一線で活躍する指揮者ならでは。今後の展開がますます楽しみになる。最後に自身のキャリアにとっての新国立劇場の位置づけについて聞いてみた。
オペラはとても期待値の高いジャンルです。これまでに海外の3つのオペラ劇場を経験したことによって、演出家や歌手などさまざまな人脈を構築してきました。さらにはヨーロッパの主な劇場の支配人たちとの関係性も重要です。これらのネットワークを活用しながら“東京オペラ”におけるアーティスティック面の代表になるということは私にとってとても意義のあることだと言えます。
そして自分もこのようなポジションを心地よく感じられる歳になったのかなとも思いますね(笑)。
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