29歳、有名私大卒の彼女がADHDで抱える苦悩 薬は近視の人がメガネをかけるような感覚

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会議では、プロジェクト内で法令違反にあたる行為はないのかきつく追及したり、窓口を訪れたのにごまかして納税をしない人には泣き出すまで問い詰めたりと、ハゲタカモードを発動してしまうそうだ。トラブルにつながることもあるが、「三浦さんは間違ったことは言っていない」と上司は言ってくれる。でも、後で「もう少し丁寧な伝え方をすればよかった」と思うこともある。

近視の人がメガネをかけるような感覚と思ってほしい

また、この取材を続けていて最近興味を持ったのが、発達障害の方の恋愛や結婚についてだ。相手の気持ちを読み取るのが苦手なASDは特に恋愛に向いていないよう感じることもある。ADHDの三浦さんはどう受け止めているのだろうか。

「現在恋人はいませんが、もし、相手から家庭的な女性を求められたら壁を感じてしまいます。何しろマルチタスク能力を必要とする家事が苦手だし、片付けも薬を飲まないとできないので……。あと、発達障害は遺伝する可能性が高いです。

私が子どもを作りたくないいちばんの理由が、こんな遺伝子を残したくないという思いからなんです。私は薬が効いたけど、中には薬が効かない人もいるらしいんです。また、妊娠中に薬は飲めないと思います。産休に入れるのは2カ月前からですし、それまで薬ナシで仕事に行くというのは、近視の人が裸眼で歩くのと同じです。そうなると、絶対に妊娠したくないと思ってしまいます」(三浦さん)

今後も薬を飲み続けながら仕事に励むという三浦さん。ADHDの薬はメガネのようなものだと思ってほしいと、三浦さんは何度も念を押すように言った。薬がメガネのような感覚として受け入れられる日がより早く訪れれば、生きづらさから少し解放される人も増えることだろう。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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