また、会社に黙って自転車通勤をしている途中に事故に遭ってしまったら、通勤災害として労災申請はできるのでしょうか。
労災保険における「通勤」とは、就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復、②就業の場所から他の就業の場所への移動、③住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動について、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされています(労災保険法第7条2項)。
会社が自転車通勤を禁止している場合でも、実際に通勤として自転車を利用して「合理的な経路及び方法」であると所轄労働基準監督署より認められた場合は、通勤災害として補償の対象になる場合があります。自転車の場合、交通事情等によって複数の経路を利用することも考えられますが、合理的な理由もなく著しく遠回りをするようなことがなければ、通勤災害として認められる可能性はあります。
不正に通勤手当を申請していたら?
通勤手当に関しては、公共交通機関を利用している社員に合理的かつ経済的経路による実費の定期代を支払う、というルールを設けている企業は多いことと思います。こうしたルールのある会社で、電車を利用せず自転車通勤を黙ってしているにもかかわらず、自宅の最寄り駅から会社までの定期代を不正に申請しているような場合、刑法上の詐欺罪や場合によっては横領罪という犯罪行為にもなりえます。
「たかが通勤手当」と軽い気持ちで申請してしまう人もいるかもしれませんが、これは懲戒処分を科されてもやむをえない行為です。また、不正な通勤方法の申告で受け取った通勤手当については、不当利得として、会社は過去10年にさかのぼり返還請求が認められています。自転車通勤にかかわらず、通勤手当の不正取得が問題となることは珍しくありません。
実際に、住所を偽って4年半もの間、合計231万円の通勤手当を不正に受給していた事案があります。通勤手当の不正受給以外にも、業務遂行をほとんど放棄した不誠実な勤務態度も加わり、不当利得は情状酌量の余地がないものとして、懲戒解雇が認められた裁判例もあります(かどや製油事件 東京地裁 平成11年11月30日)。悪質性が強くなければ、解雇の有効性は否定される傾向にあるものの、それだけ深刻な問題であることを認識すべきでしょう。
免許もいらず、気軽に誰もが乗れる自転車ですが、通勤に使いたい場合、まず会社の規定をしっかりと確認しましょう。自転車通勤が可能な場合は、交通ルールと利用マナーを守り、安全対策を万全にして気持ちよく利用したいものです。
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