新宿の古民家が居酒屋に変身したアツい事情 「ほぼ新宿のれん街」は1年目から活況に沸く

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これまで廃虚だった場所に、おしゃれな古民家の集落ができたことのインパクトは大きい。お客ではなく、通りすがりの人が写真を撮り、そのままSNSにアップ。それが拡散していったという。想定外とは言ったが、それはバズったことが想定外であり、SNSから拡散させようという戦略は、改修工事の時から考えていたのだ。

長い間、空き家になっていた古民家なので、耐震補強から水道、電気など、すべてのインフラを整えなければならなかった。物件を借りてからオープンまでの工事期間は約1年。この期間もPR戦略としてとらえていた。鬱蒼とした廃虚集落に工事現場のフェンスが立ち、ツタがなくなっていく。

古民家とドコモタワーが1つの構図に収まるこの写真は「インスタ映え」すると話題だ(筆者撮影)

徐々に整備されていくと、通行人は、「何が建つのだろう」「あの建物はいつになったら壊れるんだろう」と興味を持つ。このご時世、古い建物が壊されれば、あとに建つのは、新しいビルと相場は決まっている。

しかし、そこに現れたのは古き良き外観を生かした古民家ののれん街だった。清水氏は、大きなインパクトを与えることができると踏んでいた。現にのれん街の姿が現れると同時に写真を撮る人が増えたという。

改修工事が終わりオープンまでの1、2週間で、外国人も含めて多くの人が写真を撮りに来ていた。スマートフォンだけではなく一眼レフカメラで撮り続ける人もいた。

実際に、現地に行けばわかるが、あるアングルから古民家群を見上げると、手前に古民家群、その奥にはドコモタワーが見える。近未来と昔年の面影を同居させた構図は多くの通行人を魅了した。このアングルから写真を撮る人が多く、その人がお客となっていくのだ。まさに「インスタ映え」するのれん街となったのだ。

これについて清水氏は、「インスタ映えするこのアングルは、店舗の企画戦略の段階で拡散するだろうと思っていた」という。「インスタ映え」を広告戦略と考えるならば、偶然に良いアングルが見つかるのを待つのではなく、そのアングルを作るという意思がなければならないのだ。

3つのコンセプトで幅広い客層を確保する

「ほぼ新宿のれん街」には、シャンパンと餃子が楽しめる「泡包 シャンパンマニア」、霜降り牛タンが楽しめる「牛タン いろ葉 別邸」、イタリアンバルの「Azzurro520代々木店」、アジア料理の「アローイ兄弟」、焼き鳥の「代々木 神鶏」、海鮮焼きの「貝焼酒場 カイフォルニア」、もつ焼きの「キャプテン」という業態の異なる7店舗が軒を連ねる。

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