父を病で失った18歳が抜けられない貧困連鎖 タイ人の母親はオーバーステイ状態

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ユウキさんが奔走する間も、父親の病状は悪化の一途をたどった。あまり弱音を吐かない父親に代わり、時折、看護師が「お父さんが『見舞いに来てくれてうれしかった』と言っていたよ」「夜、独りで泣いていたようだった」などと様子を教えてくれたが、次第に病室を訪れても、眠っていることが増えていったという。

半年余りの、短くも過酷な闘病の末に父親が亡くなったのは昨春。さらに想定外の問題が降りかかったのは、それから数カ月後のことだった。父親あての郵便物などの整理をしたところ、社会福祉協議会からの生活福祉資金の貸し付けや、消費者金融からの借り入れなど、合わせて300万円近い借金があることがわかったのだ。

すぐに無料法律相談に出向いたが、弁護士からは「相続放棄をするための期限である3カ月を過ぎているので、借金の放棄は難しい。お母さんと兄弟でいったん借金を相続して、お母さんの在留許可が取れ次第、自己破産するしかない」と告げられた。ユウキさんは「僕が借金のことを知ってから3カ月以内ということを証明できればいいのですが、証拠がありません。弁護士さんからもそう説明されました」と事態を冷静に受け止める。

離婚に、オーバーステイに、借金――。自己責任論がはびこる世間からは、両親を糾弾する声が聞こえてきそうだ。

父親は家族のために独りで頑張ってくれていた

しかし、ユウキさんは「借金のことを知ったとき、申し訳ないことをしたと思いました」という。そして涙をこらえるようにして、こう続けた。

「父親は家族のために独りで頑張ってくれていたんだと思うと……。ゲームソフトなんか、ねだったりしなければよかった。母親ももともと体が弱い人なのですが、食事のときなどは自分は食べずに僕たち兄弟にわけてくれる。そんな人です。両親には、ここまでしてもらってありがたいという気持ちしかありません」

私見になるが、病気が発覚する前、早朝から深夜まで働いていたという父親はサービス残業か、違法な長時間労働、もしくはダブルワークを強いられていたのではないか。離婚やオーバーステイより、働いて家族を養う意思のある人が異常な長時間労働をしてもなお、借金をしなければやっていけない社会のほうがどうかしているのである。

ユウキさんは今春に高校を卒業、自動車整備士の資格を取るため職業能力開発校に入学した。すぐに働くという選択肢もあったが、資格があったほうが将来の就職に有利で、給与水準も上がると考えた。専門学校などに比べて学費の安い公立施設を選んだという。

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