バブル崩壊すれば10兆元超の不良債権
現在の中国では、どうなっているか? シャドーバンキングの融資残高は、IMFの数字を参照して、23.4兆元であると仮定する。他方で、中国人民銀行の統計によれば、金融機関の人民元建て貸出残高は、13年7月末時点で73.5兆元である。
これらを合計した総融資残高は96.9兆元になる。これは12年の名目GDP51.9兆元の1.86倍だ。
この水準は、日本や米国がバブル崩壊を起こした時の値に比べて、やや高めである。つまり、中国の過剰流動性は、すでに限界点を超えていると判定することができる。したがって、いつバブル崩壊が生じても、おかしくない状態だ。
では、バブルが崩壊した場合、どの程度の不良債権が発生するだろうか? 金融庁の資料によると、日本の不良債権処分損(銀行が回収できず損失とした額)は、92年から06年までの累計で96.8兆円(91年のGDPの20.4%)である。この額は、図で見るように、総貸出残高のピークから02年頃までの減少分とほぼ見合っている。このかなりの部分はノンバンク融資額の減少であることも、図から分かる。処分損が91年の総融資残高に占める割合は、11.6%だ。
米国の金融危機による損失は、IMFの資料によれば、07年から10年までの間に3.4兆ドルに達した。これが総融資残高に占める割合は15.5%で、07年の米国のGDPの23.4%だ。以上から考えると、バブル崩壊で生じる不良債権処理損は、融資残高の10~15%程度としてもよいだろう。
仮に12%として、総貸出残高から中国の場合の不良債権額を推定すると、11.6兆元になる。12年のGDPに対する比率では、22.4%である。これは、日本や米国の場合と同程度の比率だ。先に述べたゴールドマン・サックスの推計値よりは少ないが、中国政府が認める公式の数字よりは、はるかに大きい。中国のバブル崩壊は、歴史的に見て最大級のものになる可能性がある。
以上で述べたことは、理論的な根拠があることではない。しかも、中国経済の特殊性(とくに経済成長率の高さ)を考慮に入れていない。しかし、決して楽観できる数字ではない。
中国は、90年代後半に、四大国有銀行が抱えていた巨額の不良債権を処理した。この時の不良債権額は1.9兆元程度だったと見られる。それと比べて今回の不良債権は6.1倍だ。中国がこの問題をどう処理するかは、中国経済のみならず、世界の経済に甚大な影響を与える。
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