日本のディスプレーは、それでも生き返る
革命を巻き起こす、トップサイエンティスト

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食指を動かすのは東洋紡に限らない。小池教授の元には国内をはじめシリコンバレーなどの数多くの企業から、共同開発の依頼が次々に舞い込んでくる。

「僕は単なる学者ではなくて、動かそうとしているの。日本から生まれたオリジナルな技術で、オールジャパン体制で世界に出ていく。日本の工業立国とはそういうことですよ。

たとえばわれわれのゼロ複屈折フィルムと超複屈折フィルムを使うと、液晶ディスプレーはよりシンプルで、性能がよくなって、安くなる。その代わり、液晶ディスプレーの位相差フィルムはいらなくなるので、明日のビジネスを考えて、『小池は何を言っているんだ』と言う人もいるかもしれない。だけど、エンドユーザーや1~2年後のことを考えたら、新しい液晶ディスプレーのほうがはるかに大きいマーケットを持つ。僕がやっている提案は、材料がシステムを変えようとしている、イノベーションだよ。ロードマップは描けないけれど、世界を変えていく」

数々のイノベーションを起こしてきた人だから、言葉の深み、イノベーションに対する嗅覚が違う。

「あまりにもみんなイノベーションという言葉を使いすぎている。初めからみんながいいって言っているものは、イノベーションでもなんでもない。陳腐なアイデアだよ。『こいつ非常識なんじゃないの?』と言われるようなとてつもないことだけど、サイエンスに裏打ちされている、そういうものこそイノベーションだよ。日本にはイノベーションを生むファンダメンタルズ(基礎)があると信じたいし、そうじゃないと世界に勝てないよね」

鉄腕アトムにあこがれて科学者を目指した小池教授は、30年余りの研究生活を振り返って言う。

「プラスチック光ファイバーで6メートルしか光が届かなかった時代がなければ、僕はおそらくこういういろいろな発見をする学者になっていなかったでしょう。僕は典型的な次男・O型で、うまくいっていたら調子に乗って、まず勉強しないね。6メートルの壁があって、打ちひしがれて、『ああーっ!』と思ったからこそ、それから一生懸命いろいろな文献を読んだのです」

「6メートルの壁」を乗り越えたチャーミングな科学者が作ったイノベーションの光は、われわれの未来のはるかかなたまで届くに違いない。

(撮影:尾形文繁)

 

長谷川 愛 東洋経済 記者
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