(第17回)採用担当者から見た大学の就職支援

●学生に求める能力と足りない能力

 では、学生の質の低下を嘆く企業側は、学生にどのような能力を求めているのだろうか。具体的に足りない能力は何なのかを、採用担当者に聞いてみた結果が下のグラフだ。
 求める能力の上位には「コミュニケーション能力」「前に踏み出す力」「チームで働く力」「適応力」「社会常識」、足りない能力の上位には「社会常識」「コミュニケーション能力」「前に踏み出す力」「基礎的な学力」「考え抜く力」と、ほぼ相関した並びとなっている。採用担当者から見ると、「基礎的学力、社会常識に欠け、積極性に乏しく、コミュニケーションが苦手な学生」が増えているというのが現状なのだが、その採用担当者が大学のキャリア教育についてどのように考えているか聞いてみたところ、「充分キャリア教育ができている」がたったの1%となっており、「キャリア教育が充分でない」は25%にも達している。一方で、「どちらともいえない」が49%、「大学にキャリア教育は期待していない」が24%と意見が割れている。以下、採用担当者からは大学のキャリア教育に対する取り組みに数多くのコメントが寄せられた。その一部を抜粋しよう。
就業意識の低い学生に対し、もっとしかるべきキャリア教育というのがあってもよい気がする。
就職予備校化している大学がちらほら見受けられる。
当社では履歴書を持ってくるように学生に伝えているが、ある大学はこういう書き方、別の大学はこういう書き方、と画一化されていて、学生の喋っている内容に対して仰々しい感じを受ける。
最も基本的なコミュニケーション時の注意点や、一般常識的な立ち振る舞いに関しては、徹底して欲しいと感じる。
現在の大学でのキャリア教育は単なる就職活動対策にしかなっていない気がする。
キャリア教育も大切だが、本来の大学教育をまずしっかりやって欲しいと思う。
キャリア教育以前に、きちんと日本語が話せ、普通のコミュニケーションがとれるよう教育するのが先では。
「キャリア」とは、大学で教育されるものではなく、自分の人生の中で自分で考えるべき問題であると思う。
大学で学生が意欲的に学んでいるとは思えない。しかしそれは大学が悪いのではなく、義務教育、高校、親の教育がなされていないから仕方がない。
 数多くの採用担当者のコメントを分類すると、「大学は就職ノウハウの教育ではなく、キャリア教育をしっかりして欲しい」「大学はキャリア教育以前の基礎的学力をしっかり身につけることが先」「キャリア教育は本来大学がやるべきものではない」「大学だけに責任を押し付けるのは無理。学生の能力低下は社会にも責任がある」といった内容に大まかに分けられる。
 確かにどの考えも一理ある。理想を言えば、「大学以前の段階で社会的常識を身につけ、大学生として基礎的学力、教養を身につけた上で、就職ノウハウではない本当のキャリア教育を受けてしっかりした就職観を持って就職活動に臨む」ということだろう。しかし、それがいかに現実とかけ離れているかは周知のとおりである。

 2010年度新卒採用は「ゆとり教育世代の第一期生」が採用活動の母集団となり、就職活動という競争社会の門をくぐることになる。新卒採用を左右する景気についても、決して楽観視できない状況だ。
 名門と呼ばれる大学ですら、凋落の傾向が指摘される昨今、特に文系学生に対する企業の評価については、学生として迎え入れた大学が行うキャリア教育と切り離して考えにくい。

 次回は、採用担当者が大学に求めるもの、大学と協同できることに加え、評価できるキャリア教育に取り組む大学とその理由について紹介していきたいと思う。
採用プロドットコム株式会社
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者のための専門サイト「採用プロ.com」を運営。新卒、中途、派遣、アルバイトなどの採用活動に役立つニュース、情報、ノウハウを提供している。

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