これまで、タクシー空間を演出する2大キャストである、「運転手さん」と「乗客」が織りなす車内の一流、二流の差について、その高いグローバルな見識を披露してきた、一流の「グローバルエリート」であるこの私。
しかし、ここまでお読みになられた方で、まさか本コラムの結末が、「二流の乗客は自分」であることを白状して終焉を迎えると想像された方が、はたしてひとりでも、いらっしゃったことだろうか。
二流のタクシーの乗客は、やはりこの私
港区から羽田空港までタクシーで向かおうとしていたら、チケットが「成田空港発」であることに気づいてタクシーの中で狼狽をしはじめた私。
「どないしてくれるんや、どないしてくれるんや、あと50分でなんとか成田着いてくれへんかったら、香港の会議に間に合わず、絶対クビや‼ それはアカン、それはアカンのや……はよはよ! はよ行ってくれ~~~‼」と自らの大ポカを棚に上げて、運転手さんに泣きすがる、恥ずかしすぎる私。
おまけに、「ちょっとちょっと、今、高速道路の出口、間違ったでしょ? これ、オタクのミスやからメーター止めてくれるか? いつもは4000円で着く距離なんや。すでに6000円オーバー、時間も2倍くらいかかっとる!」などと車内で狼狽しているのも、この恥ずかしすぎる二流に転落した、グローバルエリートの仕業なのだ。
しかし、この世の中から、私のような二流のタクシー乗客が消滅しないかぎり、この世に太平天国は訪れない。
日常生活の基本であるタクシー車内で、居心地のいい礼節あふれた「一流の密室空間」をつくれないようでは、生活や仕事のすべてに、その人の基本的言動パターンがにじみ出るのは、致し方がない事実なのである。
本コラムを契機に、ひとりでも多くの二流のタクシー乗客が世の中から消えうせ世界平和が実現することを祈念しつつ、シンガポールのボタニックガーデンのカフェから、本コラムを締めさせていただきたい。
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