VAIO1兆円計画の舞台裏 石田佳久 ソニーVAIO事業本部長に聞く
元気なやんちゃ坊主が大人になるのを迫られた
2003年春、テレビなどエレクトロニクス事業の収益悪化で大幅減益が明らかになったソニーショック。その後5年、工場閉鎖や1万人の人員削減など、ソニーは暗い谷底に落ちた。だがその間、VAIOは人知れず成長階段を上っていた。
出荷台数は着実増。08年3月期に6000億円台(本誌推定)に達した事業売上高はNECを抜いた。営業利益率も約5%に達し、赤字の液晶テレビやゲーム機とは雲泥の差。この収益力は「1%あれば合格点」(国内パソコンメーカー)という業界水準と比べても高い。
もっとも、伸びているのはもっぱら海外、特に新興国向けだ。たとえばサウジアラビア。首都リヤドの家電店はオイルマネーで潤う現地消費者でにぎわうが、その店頭を飾る製品がVAIOだ。赤、ピンク、水色といったカラフルな展示は、クールを装う日米欧の店頭とは似ても似つかないが、家電にも豪華さを求める現地ユーザーへの訴求力は高い。
かつて世界のパソコン市場は、先進国の法人需要が成長を牽引していた。が、「今や牽引役は新興国の個人需要に取って代わられた。特に個人向けノートは、07年度まで3年連続で4割成長が続いた」(ガートナージャパンの蒔田香苗アナリスト)。企業向け受注生産モデルで急成長した米デルが06年末に世界首位から転落したのも、個人向けを充実させた米ヒューレット・パッカード(HP)に追撃されたからにほかならない。市場の牽引役交代に合わせ、ソニーは驚異的なスピードで新興市場に参入し、今では未進出市場はベトナムやアフリカ諸国ぐらいだ。
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