大前研一「20世紀の人材観が会社を滅ぼす」 カリスマコンサルが語る「本当に欲しい人材」

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1980年代までは最初にアメリカに進出し、そこで成功したら次はヨーロッパ、その次は東南アジアというように順番に市場を開拓していく「カスケードモデル」が当たり前とされていた。私は当時、これからは全世界同時に同一のビジネスを行う「スプリンクラーモデル」が主流になると考えていた。

だから、企業は後者に備える必要があると警鐘を鳴らした。だが、その頃はまだスマートフォンのようなデバイスがなかったので、実際にこれを行うのは簡単ではなかった。現在ではそれが瞬時にできてしまうのである。

そうなると、企業の人材戦略も大きく変わってくる。日本の20世紀を考えてみよう。企業が求める人材の特徴は、これまで培ってきたことがさらに上手にできる「Do more better」、あるいは、仕事のスピードが速い「Faster」型を集めることだった。

それでは21世紀はどうか。ひとことで言うなら、スマートフォンが全世界に普及したことを前提にビジネスを構築できる人ということになるだろう。技術的知見に富み、それまでの延長線上にないことを発想できる人間、と言い換えることもできる。反対に、Do more betterやFaster型の人材の価値は、ほとんどないといっていい。

それなのに多くの日本企業では、Do more betterやFaster をいまだに重用している。それは、Do more betterでやってきた人がまだ会社の上のほうに居座っているからにほかならない。彼らは、自分たちはこれでうまくいったという成功体験があるので、Do more betterでもっと努力すれば、いまの苦境も乗り越えられると思い込んでいるのだ。そういう発想しかできないといってもいい。

また、人材戦略が変わったらDo more better型の人間は、自分たちはお払い箱になってしまうのではないかという恐怖感から、自分たちと違う種類の人間を拒絶しているようにもみえる。

古い人材観や人材戦略をオールクリア

私は1995年に『インターネット革命』(プレジデント社刊)を書いた。本そのものはたいへん話題になったが、それを読んだ多くの経営者は、「大前さん、将来はこんな社会がやってくるのですね。でも、まさか自分たちが生きている間にこんなことが起こることはないでしょう」と、何も行動を起こさなかった。

ところが、Windowsが世に出ると、瞬く間にインターネットは世界を覆い尽くし、仕事のやり方もガラリと変わった。生きている間どころか現役中に“こんなこと”は起こってしまったのである。

人材戦略についても、変化はまだまだ先と高をくくって対応を怠っていると、気がついたら手遅れになっていたということになりかねないのだ。

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