大前研一「20世紀の人材観が会社を滅ぼす」 カリスマコンサルが語る「本当に欲しい人材」
しかし、そうなったときに国内工場の生産次長だった人を現地に送り込んでオペレーションをやらせようとしても、うまくいくはずがない。
社長と同じキャパを持った社員を育成する
おカネのことや地域との関係の構築など、日本で社長が行っているのと同じことをやらなければならないのだから、極端にいえば、21世紀は世界の生産拠点や販売拠点の数と同じ数だけ、社長と同じキャパシティをもった社員を育成しておかなければならないのである。
韓国のサムスン電機が海外に進出する場合は、先立って社員を現地に派遣し、数年間にわたって地元で人脈づくりや語学の習得だけをさせる。派遣されるのはもちろん、将来そこでリーダーとして活躍が期待される能力の高い人間だ。だが、その間仕事はしないため、売り上げは立たない。そういうことを世界100カ国以上で随時やっているのである。これがサムスンの強さの本質なのだ。ここまでの覚悟がある企業が、日本にどれだけ存在するだろうか。
社内で人材を育てなくても、現地の優秀な人間を雇えばいいという姿勢で海外進出した企業は、たいがい失敗している。現地に出向している日本人社員や、本社の管理部門と意見が対立した場合、日本人は優秀な現地の人間を、まずうまく御せない。
それで、使いにくいという理由でクビにして、ヘッドハンターにまた新しい人の紹介をお願いするようなことを繰り返すうちに、ヘッドハンターのほうから「おたくは評判が悪いので、もう紹介できません」となってしまうのである。
また、日本から派遣された社員が優秀で、現地でビジネスをうまく進めると、本社の人間がそれを快く思わず、軋轢が生じるケースもよく耳にする。たとえば、12月に家族でクリスマス休暇をとるのは、海外では普通だ。ところが、日本だとその頃は年末の決算に向けて大忙しという会社も多い。すると、日本の感覚で、「なんでこの忙しい時期にあいつは長期休暇をとるのだ」と、やっかみの対象となってしまうのである。
結局、本社自体に、なんとしてもグローバル化してみせるという断固たる覚悟がないかぎり、成功はおぼつかないのだ。
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