「へー、東京オリンピックの経済効果、招致委員会は3兆円と言ってるのに、大和証券は150兆円って言ってるんや。もーう、証券会社も株を売るために必死やな……」
雨降りしきるシンガポールのプールサイドで、ぼけっとスマホでヤフーニュースを見ていると、やれ皇室のIOC総会出席は皇室の政治利用だとか、やれスペインが裏取引しているとか、やれイスタンブール票がスペインに流れているとか、東京開催が決まれば2020年前で7兆円の経済効果だとか、その3分の1は建設関係で、ゼネコン株など五輪関連株が上昇しているとか。
私に言わせれば奇妙な議論のオンパレードであきれるかぎりなのだが、雨宿りついでに五輪招致に関するグローバルエリートの所感をぶつぶつ書きつづらせていただきたい。
経済効果は、将来世代から現役世代への富の移転
さて、最近はどこの国もオリンピックをするたびに大損をして、増設した五輪施設が使われることなく設備償却の憂き目を見て、維持費などで赤字が膨らんでいることが取りざたされている。あれだけ儲かると大騒ぎしたロンドン五輪も皮算用に終わり損失が拡大し、北京五輪時に作られた巨大施設の償却や莫大な維持費による赤字問題は、誰しもが知っていることだろう。
ただこの五輪自体では稼げなくても、たとえば北京五輪を盛大に開催して国威発揚に利用したり、経済の発展をアピールしたり、ブランドの弱い国がブランドを高めたりすることで経済全体への長期的波及効果があるので、イスタンブールにとっては理にかなうだろう。しかし日本のブランドは国際的に十分高く、東北に行くわけでもないのに“震災からの復興”とうたっても説得力はない。
世界中から人が押し寄せ、世界中に放送されることで日本をどう変え、何をアピールしたいのか、その戦略なきままとりあえずオリンピックを呼んでしまっては、単なるお祭りになってしまい、一部の業界だけが莫大な税金の投入から経済的恩恵を受けただけで終わってしまう。
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