生命保険に関する「困った質問」とは何か 「ありもしない正解」を求めている?

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まず、老後が何年続くのか想像してみます。余命は、長めに90歳まであるとして、65歳まで働くことにすると、リタイア後の人生は25年、月数に換算すると300カ月です。

ローンなしで、旅行や社交にもほとんど興味がないため、毎月15万円もあれば暮らしていけると思います。

すると総額4500万円です。自営業で退職金はゼロですから、主な資金源は「公的年金」です。その額は日本年金機構の「ねんきんネット」に登録しておくと、試算できます。筆者の場合、65歳以降、月額約11万円、25年では3300万円です。

ほかに、「確定拠出年金」があります。60歳時点での積立額は700万円くらいになる見込みです。公的年金の総額と合わせて約4000万円、すると不足分は500万円、300カ月で割ると1万7000円弱です。

しかし、悲観してはいません。確定拠出年金を65歳から毎月4万円取り崩すと、14年半くらい、公的年金11万円と合わせて15万円が確保できます。その間には、妻も年金受給者になる見込みです。2人分の年金があれば、将来、住居のメンテナンス費などが、重く感じられる時期があっても、持ちこたえられそうに思っています。

もちろん、公的年金の受給開始年齢が70歳くらいになり、給付額が減額される可能性も考えられます。税金や社会保険料負担は大きくなっているかもしれません。

とはいえ、どのみち、さまざまな変数はつきもので、あらゆる不確実性を反映した対応は無理なのです。「先が見えない」と不安になるより「老後を想像していられるのは、今日、明日の暮らしに困っていない証拠」と受け止め、仕事を細く長く続けられるように努力することにします。

大切なのは、具体的に試算すること

いずれにしても、大切なのは、具体的に試算することでしょう。変数の多さを考えると、緻密にやる必要はないと思います。少なくとも筆者の場合、至極簡単な試算をしただけで、「漠然とした不安」のようなものはなくなりました。自分と向き合わないままでは、何も始まらないのではないでしょうか。

3つの困った質問は、どれも「おカネは大切だ」と考えるがゆえに、繰り返されるのだと思います。そうであれば、迷うことはありません。「おカネが増えやすいのか、減りやすいのか」を判断の軸にしたらいいのです。

保険は、おカネが減りやすい仕組みなので、利用を最小限にとどめます。「お得な保険」や「解約後の後悔の念」を想像することも、人の感情としては理解できます。だからこそ、原則を重視するのです。

そして、自分の人生で必要になるおカネの額については、自分の試算を基にします。金融機関が提供する情報などは、他人の(大事な)おカネを動かしたがっている時点で、「彼らのおカネが増えやすい(その分、こちらのおカネが減りやすい)話につながるのではないか」と疑うことにするわけです。

保険以外の分野でも応用が利きそうな気がしますが、いかがでしょうか。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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