一般の方からの保険相談や各種媒体からの取材に対応していて「困ったな」と感じる質問を受けることがあります。「ありもしない正解」を求めているように思えるのです。以下、具体例と対処法をご紹介します。
「お得な保険」はあるはずがない
まず、メディアの方々から「お得な保険を紹介したい」と言われることです。筆者は、お得な保険などというものがあるほうがおかしい、と思います。
「保険料-保険会社の運営費=死亡保険金や入院給付金等の原資」が原則だからです。加入者全体の収支は、保険会社の運営費分、マイナスになる仕組みです。そうでなければ、保険会社は破綻してしまいます。
あえて損得という言葉を使うと「保険は損を前提に利用するもの。得する保険はない」と伝えるのが、メディアの役割ではないでしょうか。
ついでに言うと、メディアの人たちが、各種の給付金を「もらいやすい」保険を得だと評する傾向にも困ったものだと感じます。
たとえば、病気やケガで、長期間、仕事ができないときに備える「就業不能保険」「給与サポート保険」について、給付金が支払われない期間(免責期間)に触れ、「180日より60日と、短いほうがいい保険」と評価するのは、ありがちな間違いです。免責期間が短いと、保険料が高くなるからです。
保険の利点は、安い保険料で重大な事態に備えられることですから、長い免責期間を超えて、就業不能状態が継続している場合に給付金が支払われる保険のほうが、利用価値は高いと考えられるのです。
あくまで「得する保険」にこだわる人は、保険料の「還元率」に関心を持つとよいでしょう。保険数理の専門家によると、たとえば、売れ筋の「医療保険」の保険料には、保険会社の運営費が30%程度含まれているそうです。
専用ATMに1万円入金すると3000円手数料がかかり、7000円が加入者に還元されるイメージです。金融商品としては暴利を疑われても仕方がない気がします。
現状、保険料の還元率を考えるために必要な情報が開示されていないのは、還元率を厳しく問う人が少ないからでしょう。「還元率を比較して、より良心的な会社や商品を利用したい。不明な場合、契約しない」と明言する人が増えると、相対的に保険の「お得度」は上がると思います。
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