過日、300人の会社で23人も取締役がいる会社があると聞いてびっくりしました。あまりにも安易な取締役人事といえます。これならば、誰でも役員になれると思うのではないでしょうか。
こんな状態の会社では、取締役にして取締役にあらず。まさに部長クラスの人事であり、「取締役インフレ状態」といえます。取締役になっても取締役としての自覚も生まれませんし、取締役としての責任も感じないのではないでしょうか。むろん、それぞれの会社にはそれぞれの事情があると思いますので、その是非について申し上げるつもりはありません。
かつてより取締役の人数は減少している
取締役が多い会社の話を聞いたときに、昔は確かにたくさんいる会社が多かったことを思い出しました。かつては取締役が多い会社は当たり前。減少が始まったのは1990年代の後半からです。
日本の上場企業では取締役数を減らし始めています。それは、取締役会の形骸化があります。常務取締役以上を集めた「常務会」で意思決定が行われ、「取締役会」はその決定を承認するだけになっていました。ならば、取締役の人数が多すぎるのではないか、となったわけです。
加えて、グローバル化の時代に、迅速な決定が遅れるなどの理由もありました。大杉譲一教授(中央大学法科大学院)によると、1975年ごろは取締役数が最多の会社は某商社で、49人もいたそうです(現在13人)。そして30人以上の取締役がいる会社は20社もあったそうです。またその後、最多の役員数になった、社員約1万人の某大手ゼネコン会社も、今となっては54人いた取締役数を40人も減らし14人にしました。そのほかの上場企業も20人以下。ほとんどの会社が、取締役の数を減らし、減らしても、経営成果にまったく影響はなかったということです。
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