執行役員という肩書がありますが、これは役員とは言いながら、取締役ではありません。取締役が経営を行い執行役員が業務執行をする、という具合に役割分担をするためのポストです。
経営権や法律上の責任があるわけではなく、要するに、部長や課長などと同じく社員の役職名です。いわば、従業員のなかのトップという位置づけであり、「役員待遇の従業員」ということもできます。ですから、ここでは執行役員が多いか少ないかは問題にしていません。
「船頭多くして船山に上る」
取締役は、もちろん大きな責任を負わなければなりませんから、少数であることはそれだけ大きな負担、仕事量になるといえます。しかし、1億2000万人の国民を束ねる大臣の数は20人(第3次安倍内閣)ですから、極論ですが、企業であれば20人以内どころか、数名でいいといえるかもしれません。
「船頭多くして船山に上る」という諺を、松下幸之助さんはよく口にしていましたが、まさにそのとおり。ですから、十数万人の社員であった松下電器産業(現パナソニック)でも26人の取締役数に抑えられていました。あの有名な抜擢人事である、世に言う「山下跳び」も、山下俊彦社長は、その時は序列25番目の取締役だったのです。
松下さんは「取締役が多い」と言っていました。1960〜70年代には、松下さんだけでなく、どこの会社も増大する取締役数に頭を悩ませていました。それが、先の理由と相まって、なによりPCの普及に伴い、各企業が取締役の人数を大幅に削減する流れになってきました。今では、多くの会社が最小限の取締役数にしているのではないかと思います。しかし、これからAIやIoTなどの進歩活用によって、さらに幹部の人数は減少させられるのではないでしょうか。大企業であっても取締役は10人以内という会社が増えてくると思います。
ところで今、オーナーならばいざ知らず、相談役、名誉会長、副会長、最高顧問、顧問、参与など、役職といえるのかどうかわかりませんが、大抵の会社では、そのようなポストが残存しています。しかし、本当にそのようなポストが必要なのかどうか。いつも不思議に思っています。
日本の企業は、なんのために、そのようにポストに就いた、第一線から退いた役職者が多いのか、そのような肩書があるのか、その理由はさまざまでしょうが、100社に行ったアンケートでは、「経営上の指導助言。業界団体での活動の円滑化。取引先との継続円滑な対応。官庁との折衝の円滑化」(日本経済新聞 7月4日)のために必要としています。
別の説明によると、その人の、その時の実力はともかく、長年の貢献、長年の尽力に対して報いようという配慮というものもあります。なかには、経営に携わっていた時に十分に報いることができなかった報酬を、引退しても一種の年金のような形で後払いしているというばかげた理由を挙げる人もいるようです。
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