川上量生「中国のネット管理政策は正しい」 機械が人間を支配する時代は来るのか

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――テックに対する日本のユーザーの感性は高い、というのが川上さんの持論です。

世界で大ブームとなったサービスの中には、最初に日本で火がついたものがたくさんある。MMO(大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)の先駆けである「ウルティマオンライン」や、YouTubeの黎明期にも、言語の壁を超え、日本人ユーザーの存在感がすさまじかった。海外でもこの点に注目する人は少なくなくて、「ポケモンGO」を作ったナイアンティックのジョン・ハンケさん(CEO)も「日本ではやっているものが数年後、世界ではやる。だから僕はそれを知りたい」と話していた。

そういう洗練された日本のユーザーというのは、普及する初期からネットを使っていた「原住民」。彼らの動向を観察することはビジネスにおいてすごく価値がある。

日本人は、ネオテニー度合いが高い

――なぜ日本人は感性が高いのでしょう。

日本人は子どもっぽいんでしょう。動物全体の特徴として、幼体の頃はあらゆる可能性を広げるための好奇心が強い一方、成体になるにつれ、生存確率を上げるために余計な冒険をしなくなる。それなのに日本人は、ネオテニー(幼生の外見のままで性的に成熟する)度合いが高いというか、成人になっても好奇心が強い。

デジタルガジェットに投資を惜しまない層が厚いのも日本の特徴。これはテック感度の高さと、ある程度相関する。ただ僕は基本、マニアはマーケティングできないと思っている。マーケティングって本来、共感することだ。マニア度が高まるほど、共感できる人の数は減る。感度を高めるのは重要だが、感度ばかり高めていくのも考えものだ。

――中国の「グレートウォール(グーグル、フェイスブックなどの利用規制)政策」についても時々発言されますね。

中国の政策はある意味正しい。国家として当たり前のことをやっていると思う。近年、国家と「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」のようなグローバルプラットフォームが対立する構造はより明確になってきていて、そんな中で国家ができうることは「遮断」しかない。プラットフォーム側も、国家と衝突し、規制されることをいちばんのリスクと感じている。

いまやネットがインフラとして莫大な影響力を持ち、国家としても管理したい部分になったのは間違いない。ただ、もうどのプラットフォームも世界規模になっていて、簡単に「うちの国だけ国有化」みたいなことは現実的に難しい。

それを、主要国の中で唯一実現したのが中国だ。僕はこれまで、何度か「中国は正しい」と発言して炎上してきたが、これは倫理的に正しいとか、政策を支持するとかではなく、国家として非常に合理的な行動だと言っているのだ。実際、グーグルやアマゾンに対抗できるプラットフォームを持てたのは中国だけ。産業政策として正しかったと言わざるをえない。

もし同じことを日本がやろうとしたら、世論が「ふざけるな」と反発するはず。ただ日本は遮断しなくても、国内だけで成立しているコンテンツ産業が非常に大きい。目立つネット企業を1つも育てられていない国がたくさんある中で、健闘しているといっていい。日本の場合はグレートウォールを作らなくても、まず日本語の壁がある。そして、おカネを払うネットユーザーの層が厚い。これはiモードが基礎をつくったのだと思う。上を見れば米国、中国の巨大企業があるが、世界の中では非常に恵まれた環境だし、そのチャンスを逃さず、ものにしてきたのではないか。

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