治療長期化時代の正しい「がん保険」の選び方 必要十分な保険の要件を押さえておこう

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筆者も、これからはベーシックタイプのようなプランが、まさに基本になるのかもしれないと感じました。しかし、3つのタイプの保険料を同年齢で比べているうちに面白いことに気づきました。シンプルを基準にすると、ベーシックは2倍弱、プレミアムは3~3.4倍の料金になっているのです。

性別 年齢 保険料
シンプル ベーシック プレミアム
男性 30歳 1209円 2341円 3646円
40歳 1735円 3307円 5297円
50歳 2661円 5006円 8211円
女性 30歳 1437円 2793円 4663円
40歳 1798円 3523円 6073円
50歳 2110円 4122円 7122円

保障内容:がん診断一時金額100万円、治療サポート給付金額10万円、がん収入サポート給付金額50万円、がん先進医療給付金あり(ベーシックタイプ、プレミアムタイプ)

したがって、ベーシックタイプの保険料がシンプルタイプの2倍弱であることから逆算すると、保険会社は、「治療サポート給付金」の支払いは100万円以内におさまることが多い、と見ているのではないかと推察されるのです。診断給付金100万円+治療サポート給付金(10回分の)100万円を保障することで、シンプルタイプの倍くらいの保険料に達するという見立てです。

保険料は、人ががんにかかる確率も、抗がん剤治療などを繰り返す確率も、あらかじめ高めに見込んで決められているはずですから、10回でも多いほうなのかもしれません(先進医療に対応している保障の保険料は、各社とも100円程度なので無視します)。

プレミアムタイプでも同じように推察できます。シンプルタイプの3~3.4倍程度の保険料になるのは、ベーシックタイプに上乗せで100万~140万円くらいの給付金が支払われる見込みだからでしょう。ということは、最大5回の給付がある50万円の収入サポート給付金は、2~3回程度の支払いになることが多いのではないか、と見てよいように思うのです。

このような推計から、筆者はやはり診断時の100万円で一線を引くことにしようと思います。治療サポート給付金にこだわる向きは、診断給付金を2倍の200万円にするといいでしょう。まとまった額のおカネがあれば、抗がん剤治療費・検査費など「おカネの使い道」は問わないからです。

自分で払える人は「がん保険加入は必須ではない」

一方、収入サポート給付金については、保険料との兼ね合いで「そこまで保障範囲を広げるべきだろうか」と再考する必要を感じます。そして、複数のアンケート調査などをふまえて、100万~200万円のおカネを、自分で払える人は「がん保険加入は必須ではない」と判断してもいいと思います。

「がん保険」で100万円単位のおカネを用意するには、かなり高いコストがかかるからです。今回の新商品では、開示情報から、おおむね保険料の20~30%が保険会社の運営費に回る見込みであることがわかります。専用ATMに1万円入金すると2000~3000円の手数料がかかるイメージです。

保険金支払いに要するおカネも多めに見込んであることを想像すると、加入者に還元されるおカネの割合は、70%にも達しないかもしれません。ライフネット生命のように、保険料に含まれる保険会社の運営費(付加保険料)を開示していない保険会社は、そもそも「契約に要するコスト」ついて触れられたくないような高コスト商品を販売しているではないかと思えます。いずれにしても、おカネの心配をしている人に積極的な利用をすすめられるシステムではないはずです。

今回、ひとまず結論が出せたのは、シンプルタイプのプランがあったことと、付加保険料が開示されているためです。もとより、大病とおカネの問題について考えるとき、冷静な判断ができる人は少ないと思います。保険会社には、あらためて、わかりやすい商品開発と、給付金の支払い見込みやコスト等に関する情報の開示を望みます。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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