元ロッテ小宮山悟が語る「理不尽練習」の意味 いじめや暴力と、愛のムチとは何が違う?

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プロ野球・千葉ロッテマリーンズなどで活躍し、現在はNHKのメジャーリーグ解説でおなじみの小宮山悟氏。高校や大学での理不尽とも思える上下関係やしごきについて、どう考えているのか(写真:アフロスポーツ)
かつて、野球の名門や強豪チームには理不尽な練習と厳しい上下関係がつきものだった。監督に課せられる特訓や、しごきとも言える先輩からの教育があるから、チームは強くなるのだと長く考えられてきた。「苦しさの対価が勝利なのだ」と、誰もが思っていたのだ。
しかし、時代は大きく変わった。表面的に見える理不尽な暴力は格段に少なくなった。一方で、選手たちの精神面のひ弱さを指摘する声もある。以前、高校野球で美徳とされた「特訓」、すなわち「理不尽な練習」に意味はあったのか。厳しい上下関係によって培われたものは、まったくないのだろうか。拙著『殴られて野球はうまくなる!?』で早稲田大学野球部時代を回想する、球界きっての「理論派」小宮山悟氏は、意外とも思える持論を展開する。

 

現在、NHKのメジャーリーグ解説をはじめ、プロ野球解説者として活躍する小宮山悟。早稲田大学野球部で通算20勝をマークし、1989年ドラフト1位でロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)に入団。プロ野球通算117勝を挙げた小宮山は、2002年にニューヨーク・メッツで一年間プレーした経験を持つ元メジャーリーガーでもある。

実は、小宮山はプロ野球選手としては異色のキャリアを持っている。

高校時代に野球での実績に乏しい小宮山は、一般受験で早稲田大学入学を目指したがかなわなかった。1986年、2年の浪人を経て大学に合格したときにはもう20歳になっていた。

当時の早稲田大学野球部には、甲子園での実績を引っ提げて入部した野球エリートもいれば、小宮山のように大学浪人した苦労人もいた。日本の野球界をリードしてきた名門には厳しい上下関係も規律もあった。そこで、野球界の「洗礼」を受け、小宮山は精神面でも肉体面でも成長していく。

「野球選手として活躍できたのは早稲田大学野球部の4年間があったから」と言い切る小宮山は野球における「理不尽な練習と厳しい上下関係の意味」を知る数少ないひとりだ。

20歳の大学1年生として、早稲田大野球部に入部

小宮山が大学入学を果たしたときには、同い年の選手は3年生になっていた。大学野球部では、年齢よりも学年が重視される。20歳になっていても、1年生は1年生だ。1年の春季リーグ戦のベンチ入りメンバーに選ばれた小宮山が“指導“の的になったのは必然だった。「私がかなり生意気に見えたことは間違いないでしょうね。年齢の問題もあったけど、態度そのものが。『下級生のくせに生意気だ』と映っていたんでしょう」。

それぞれの野球部には、代々伝わる規則があり、罰則がある。規則の厳格さや懲罰の激しさの程度には違いがあるが、先輩が後輩に対して力を行使するのはどこでも同じだ。是非はともかく、下級生は受け入れる以外に方法はない。

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