日本の富裕層は、いったいどれほどの所得を得ているのだろうか。なかなか実感が湧かないところだが、関心を持っている人は多いことだろう。
今年5月、世間をにぎわしたニュースは、富裕層の世界を垣間見られる一つの例となった。ファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長が、米画家ジャン=ミシェル・バスキアのどくろを描いた絵画を1億1050万ドル(約123億円)で落札。米国作家の作品として競売史上最高額だったこともあり、海外メディアも相次いで報じた。『会社四季報』(小社刊)で上場企業のさまざまなデータを保有する東洋経済からも一つの具体例を紹介してみよう。
東洋経済オンラインは上場企業の経営者が1年間に受け取る配当金のランキングを独自に試算した。配当とは株式会社が1年間に得た利益の一部を株主に還元するのが基本的な仕組み。赤字の場合で配当するケースもある。保有株数に応じて1株当たりの配当額を掛け合わせることで、それぞれの株主の配当金を算出できる。
ケタ違いの収入を配当金で得る経営者たち
株式を公開する上場企業では創業者一族の経営者が大株主に名を連ねていることが多く、庶民とはケタ違いの収入を配当金で得ているケースが見受けられる。ランキングは『会社四季報』などで東洋経済が独自に予想する1株当たり配当金を用い、原則として今後迎える本決算発表後に支払う予想配当金とした。経営者名で他の上場企業に大株主として出資している金額も一部加えている。もちろん、このまま手取り収入になるワケではなく、一部は税金がかかる。
1位はソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。その金額は101億7300万円にも上る。ソフトバンクを世界的な企業に育て上げた孫社長の功績は大きく、配当金もケタ違いだ。孫社長は2012年3月に100億円を東日本大震災の被災地に寄付するなど、社会貢献でも話題を集めた。
2位はファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長兼社長(80億4554万円)、3位はスタートトゥデイの前澤友作社長(35億2111万円)などの名前が続く。10億円以上の配当金を受け取っている経営者は8人。1億円超では117人となる。参考値として併載したのが予想配当性向。配当性向とは企業が1年間に得た利益のうち、配当に回す割合であり、高いほど株主に優しい企業となる。また従業員の平均年収や平均年齢も記載した。
会社によっては経営者の親族や資産管理会社が大株主になっている例も少なくなく、家庭単位でみるとさらに大きい配当金を得ているケースがありそうだ。庶民が思わずうらやんでしまうほどの高収入を得ているが、それだけリスクを取って会社を興し、大きくしたうえで果実を得ているという見方ができる。