スマートフォンの普及により、消費者と情報の接点は多岐にわたるようになった。若い世代はSNSやネット動画に多くの時間接するようになり、中高年でもネットが主な情報源という人は少なくないだろう。企業はテレビや新聞、雑誌に限らず、検索エンジンやサイト、SNSなどを活用したネット広告に力を注いでいる。
ただ、ネットで面白そうだとクリックしたら、あからさまな広告でガッカリしたり、動画の前に流れる広告にイライラした経験は誰しもあるはず。ネット広告で消費者とメディアと広告主がいずれも満足する「三方良し」 の関係になるにはまだまだ試行錯誤が必要だ。
広告が過渡期にある中、企業のブランディングや販促にかけるおカネはどう変化しているのか。東洋経済オンラインでは、毎年、企業が広告宣伝にかけるおカネを独自に調査している。有価証券報告書の2017年4月期までの1年間のデータを基に、2017年度版の広告宣伝費に関するランキングを作成。まずは広告宣伝費が多い会社から紹介する。
上位には自動車や小売り大手が目立つ
1位はトヨタ自動車の4487億円。前年から403億円の減少となっている。ここ数年、トヨタ自動車は広告宣伝費を増やしていたが、今期は売上高の減少とともに広告宣伝費も減額となった。
2位のソニー、3位の日産自動車も売上高が前年比で減少。それに伴い広告宣伝費も、ソニーが275億円、日産自動車が288億円減少している。一般消費者向けにビジネスを展開する企業にとって、広告宣伝費は必要不可欠なコストだが、投下する額は業績の影響を受けやすい。特にランキング上位に入るような規模の大きい会社は、すでに知名度も高いので、売上高に対して一定以上の割合を超える広告宣伝費を、無理に捻出しなくていい場合もあるだろう。
トップ5の顔ぶれと順位は、昨年と変わらなかったが、5社すべての広告宣伝費が前年比で減少した。
ランキング上位の企業は、テレビCMや街頭ビジョン、看板など、生活の中でその広告が目に入ってくることが多い。
たとえば車に疎く、車メーカーのターゲット層からも外れている人の場合、インターネット上で車関係の広告に出くわす機会は減る。それでも、自動車メーカーの名前はもちろん、車名にも聞き覚えがある、という状況は容易に想定できる。テレビCMなど不特定多数に向けた従来型の広告は、個人の興味の有無にかかわらず、一般的な認知度を高める効果がある。家や通勤電車で常時スマホを眺める生活をしていても、従来型の広告モデルの持つ影響力を軽視することはできない。
このランキングは一般業種を対象に、有価証券報告書(2016年5月期~2017年4月期)の損益計算書および損益計算書関係の販売管理費の注記に記載される数字を取得した。金額が取得できたのは928社。原則として販売管理費の内訳は、販売管理費全体の10%以上を占めた項目しか開示義務がない。企業規模を考慮すれば、広告宣伝費は多いだろうと思われる企業であっても、金額を公表していない場合がある。なお、広告宣伝費と販売促進費が合算値で開示されている場合にはその合計値を用いている。
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