年の瀬が近づいてきた。企業にとって12月は従業員への冬のボーナス(賞与、一時金)の支給のほか、取引先への支払いなどがかさむ時期。神経を尖らせている企業経営者や財務・経理担当者もいるだろう。
一般家庭もそうだが企業もカネがなければ極端な話は破綻してしまう。そんな企業の財務健全性を示すのがネットキャッシュだ。現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債と前受金を差し引いて算出する。企業の実質的な手元資金であり、これが多いほど財務的な安全性が高い。
東洋経済オンラインは約3600社に及ぶ上場企業のネットキャッシュを割り出し、上位500社をランキングにした。昨年同時期にも同じ内容のランキングを公表したが、その最新版となる。昨年ランキングとの違いは直近四半期決算ではなく、各企業の直近本決算をベースとしているところから、金額や順位の変動がある点にはご注意いただきたい。
1位ソニーのネットキャッシュは1兆0364億円。一時は経営不振が騒がれ、現在でも9000億円近い有利子負債を抱えているものの、それをはるかに上回る現預金や短期保有有価証券を持っており、財務的な基盤は強い。
2位任天堂は同9093億円。今回で3回目となる本ランキングで上位の常連だ。スマホ時代に向けた収益モデルの構築に手こずっているといわれるものの、財務上は極めて健全で2012年3月期や2014年3月期のような数百億円レベルの赤字が数年続いても、財務上はびくともしない。
3位は米国で「売れすぎ」のスバル
3位富士重工業は同8381億円。「スバル」の車名ブランドで展開する自動車メーカーだ。特筆されるのは米国での大躍進。水平対向エンジンと4輪駆動というスバルの特徴は、雪道のような悪路走行でも高い安定性を発揮。現地での旺盛な需要をつかまえ、増産しても追いつかないほどの好調な販売が、手元資金を積み上げる要因になっているようだ。
4位にはファナック、5位信越化学工業、6位キーエンス、7位京セラ、8位キヤノンなど業績も堅調で国際的に見ても優良な企業が続く。
2008年秋のリーマンショック時に頻発したのが「黒字倒産」。決算上の業績は黒字なのに資金繰りが急速に悪くなった企業が何社も倒産した。逆にいえば、本業がいくら赤字であってもキャッシュが回り続けていれば、企業が潰れることはない。手元資金を厚くしておくことは、企業経営者や財務・経理担当者にとって安心できることでもある。
一方で、ネットキャッシュが積みあがっていることだけを単純に喜べない。成長のための投資や株主への還元という意味で、手元資金を持て余しているという見方もあるからだ。財務が健全だから、すべてが順調とも限らない。