このように、株式への投資が増える反面で、債券への投資は頭打ちないしは減少傾向を示す。つまり、日本に対する投資の性格が、それまでの「リスクオフ」の投資から、リスクのある投資に変わったのだ。
投機主体の立場から見れば、収益率の高い対象があれば、もちろん望ましい。安倍内閣の金融緩和アピールは、円安を通じた株価上昇を期待させ、したがって、短期的に高い収益率の投機の可能性を提供する。投機資金にとっては、千載一遇のチャンスであったに違いない。
投機で動いた為替レート
証券投資は、全体として見れば、月間1兆~2兆円の流入超過が続く。資金流入があれば円高になるはずだ。では、なぜ円安になったのか?
ちなみに、リーマンショック前も、証券投資は流入超過にもかかわらず円安になった。このことから、為替レートに、証券投資以外の要因が影響を与えていることが分かる。
国際収支項目で為替レートの動きに関連すると思われるのは、「誤差脱漏」だ。「誤差に意味がある」とするのは、奇妙な考えと思われるかもしれない。しかし、そうではない。
国際収支の誤差脱漏は、ランダムなものではない。以下に述べるように、一定の傾向を示しており、しかもその動きが為替レートの変動と強く相関している。しかも月間のネット取引額は数千億円と、かなり大きい。時には1兆円程度になり、証券投資のネット投資額に匹敵する。
これは、投機的な資金の動きを表すと解釈できる。円キャリー取引がケイマン諸島の金融センターなどを通じて、国際収支統計に捕捉されない形で行われている可能性が高い。
図ではっきりと分かるように、誤差脱漏は、リーマンショック直後に急激に流入に転じ、08年12月から09年2月にかけて、移動平均で見て月1.5兆円を超える流入になった。これは円キャリー取引の巻戻しを反映したものと考えられる。これが急激な円高の原因になったのだ。その後も流入が続いた。
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