資金逃避先から、投機対象に変わった日本 円安と株高は、国際的投機によって生じた

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誤差脱漏がそれまでの月間数千億円の流入から数百億円の流入に減ったのが12年10月から11月だ。これは、円高方向への投機の減少を反映したものと考えられる。そして、12月には流出に転じた。つまり、この頃に、円安に向かっての投機が始まったのだ。その後、額が増大した。

円安の原因が短期債への投資頭打ちと誤差脱漏だとすると、それらは、以上で見たように、安倍内閣の発足より前に生じている。

このように、円安は国際的な投機資金によって生じた。少なくとも、安倍内閣の金融緩和で生じたのではない。ただし、12月以降顕著に増えたのは、安倍内閣の姿勢が、円安投機、株高投機を促したためだろう。

為替レートの予測は、原理的に不可能である(市場がすべての情報を直ちに価格に織り込んでしまうからである)。ただし、今後の推移に大きな影響を与える要因が、次の二つであることは間違いない。

第一は米国の金融政策だ。緩和政策が終了すると、米国の金利が上昇して円安になる。緩和が継続するなら、現在程度の水準が続くだろう。

第二は、新興国からの投資流出が起きて日本がセイフヘイブンと見なされると、11~12年頃の動きが再現されて円高になる。

いずれにしても、円安が続く保証はない。株価は円安がさらに進行することで上がる。円高にならなくとも、為替レートが一定の水準にとどまれば、株価の上昇は続かないことに注意が必要だ。

週刊東洋経済2013年8月24日号

 

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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