「1.5倍の高速授業」で受験に勝ち残る方程式 林修先生も教えるナガセ、社長からの直言

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――政府与党は憲法改正で「教育無償化」を唱えています。学校の授業料が無料になれば、その分、塾・予備校に振り向けられるなど、この業界には追い風になると思いますが。

教育無償化をやっても、日本の人口が減っては何なのか、という話になる。それよりも人口増加のほうが大事だ。私は「第3子を産んだ家庭に1000万円の育児資金を支給せよ」と言っている。

2016年の出生数は97万人。統計開始以来、初めて100万人を割り込んだ。第1次ベビーブーム時の1949年には269万人いたのに……。核家族化が進み、おカネも大変で、子どもが2~3人欲しい気持ちがあっても、コストがかかるから。今のままでいったら、2100年には日本の人口が6000万人台になる、という予測もある。そうしたら、持ち家も大きく減り、不動産やゴルフ会員権などの値段も下がる。

保育所を増やしたり、幼稚園で預かり保育をしたりと、間接的な支援は、まったくないよりもあったほうが(事態は)改善する。ただ、子どもが増えるような、直接的な動機づけにはならない。

――「第3子に1000万円」は永瀬社長の持論です。

国民1人が一生涯で3億円稼げば、税や社会保障などの国民負担率が50%として、1人生まれると、1億5000万円を国に与えてくれる。国が1000万円出せば、1億5000万円リターンしてくれる、ということだ。

インセンティブをつけて、子どもが生まれれば、家庭ではマンションを買うなど、おカネも使いたくなる。その意味では、教育無償化より、日本人の頭数を増やすことが重要だ。

ストレスこそ成長の原動力になる

――教育費まで全部を国が負担したら、子どもにハングリーさがなくなりませんか。

勉強に限らず、100メートル競走でダメなら、泳ぎでもいい。自分の得意分野を選べばいい。私は、(出生・育児とは別に)勉強をするなら自分のカネで、という考えだ。お国がすべて面倒を見るのでなく、自分の責任。ストレスがあるからこそ、それがモチベーションに代わる。ストレスは成長するための原動力だ。

ロンドンオリンピックの200メートル背泳ぎ、銀メダリストの入江陵介選手(現ナガセ社員でチーム「イトマン東進」所属)は、ゼロ歳から水泳を始めていたが、うちの「イトマンスイミングスクール」でも、相当なプレッシャーの中で練習していた。毎日毎日1万メートル泳いで、天井を見る日々に耐えられますか? でも彼は「自分が勝てば、周りの人たちが喜んでくれる」と。われわれも、肉体の限界を見せてもらえ、励まされる。

――なるほど。ストレスやプレッシャーもそうですが、勉強では、単に「勉強しろ」ばかりでなく、効率性も求められますね。

「この勉強は必ずこの日のうちに」と決めて、短時間に集中してやるほうが効率いい。東進ではすべての授業について、標準スピードと1.5倍速のスピードの2種類の映像授業を配信、生徒はいずれかを選び受講できるようになっている。90分の授業を1.5倍速の60分で流しても、聞き取れるし、頭の回転だって速くなる。あるいは、1人でなくグループ型で勉強させるほうが、他人の面倒を見たりして、結果、自分(の成績)も伸びたりする。

われわれは高校生向けでシェア12%とトップだが、日本一になったのにはそれなりに理由がある。日本の人口が増えて国家が発展すれば、業界も発展し、最終的に自分たちにも還ってくる。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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