介護業界の「低賃金・重労働」より深刻な問題 介護現場はまさに「異文化の融合体」だ

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離職率が高いことで知られる介護業界。低賃金重労働、人手不足などさまざまな問題が指摘されていますが、退職理由を調べてみると、意外や「人間関係」が原因で辞めた方が最も多くいました(写真:kikuo / PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係をつくる「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

介護業界の離職率が高いことは、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。介護労働安定センターの実施する「平成27年度介護労働実態調査」によると、直近の2015年の離職率は16.5%であり、1年間で約6人に1人が離職していることになります。

退職理由のTOPは「職場の人間関係」

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離職率が高い直接的な理由としては、介護職員がまだまだ足りていないことで、仕事を辞めてもすぐ次の仕事が見つかりやすいという状況が影響しています。

実際に仕事を辞めた理由を調べてみると、最も多い25.4%が「職場の人間関係に問題があったため」と回答しています。「法人や施設・事業者の理念や運営のあり方に不満があった」が21.6%と続き、「自分に向かない仕事だったため」は、たった4.1%にとどまります。

筆者は、8年間で500以上の事業所、1万人以上の介護職の方々の相談と研修を担当してきましたが、実際に「仕事自体は楽しいのに、人間関係が嫌で辞めたい」という声を本当によく聞きます。

介護業界における人間関係の問題とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

私が介護現場を見てきたなかで感じたのは、介護現場ほど働く人の年齢層が幅広く、それまでのキャリアが多様なところはないということです。介護現場では、高等学校、専門学校を卒業したばかりの10代から、定年後のセカンド、サードキャリアの60代、70代までが一緒に働いています。

介護職に就くまでのキャリアも実に多様です。最近では、大学の社会福祉系学部を卒業された人以外にも、色々な学部を卒業されて就職する方、子どもの手がかからなくなった主婦の方、転職された方、親の介護を通じて社会貢献に目覚めた方など、挙げればきりがないほどです。

こうして学歴もキャリアも、あらゆるバックグラウンドを持つ人が同じ業務に就いています。介護現場とは、まさに異文化の融合体なのです。

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