さまざまな世代や価値観が混在する職場でコミュニケーションを取っていくことは、一筋縄ではいかないことが想像に難くありません。さらに、シフト勤務が多く、いつも同じ人と仕事ができるとは限らないのも、一層周囲とのコミュニケーションを難しいものにしています。
しかし、介護職は医療と同様、チームで連携・協力しながら働くことが必須の現場です。そこで職員同士の意思疎通がスムーズにできなければ、致命的な問題です。ですから、個々のコミュニケーション能力の向上は欠かせません。
具体的な「あと一言」ですれ違いをなくす
では、いったいどのようにすれば、多様な人々が円滑なコミュニケーションを取ることができるようになるのでしょうか。必要なのは、なんといっても伝えたいことを相手に伝わる言葉で伝えることです。同じ日本語を使っている人同士の会話でも、“通じて当たり前”ではありません。普段自分が行っているコミュニケーションに、具体的な「あと一言」を添えることが肝心です。
たとえば、普段料理をしない人に対して「塩を目分量で」という指示をすることは意思疎通になりません。「塩ひとつまみ」だってかなり危ない言い方です。つまむといっても、人によっては指5本、3本、2本の可能性が出てくるわけです。「ひとつまみといったら当然〇本でしょ!?」と怒ること自体が間違っています。
こうした齟齬を防ぐためには、「塩は、3本指でつまめるくらいの量ね」と指示しなければならないわけです。これでも多少の個人差は出ますが、当初の指示よりはかなり精度が上がります。
介護業界に限らず、どんな職場においても、相手に対して「そんなことわかるでしょ」という思いが生じると、相手が思いどおりに動いてくれないときに怒りや不満を持ちやすくなります。仕事の指示出しは、つねに、より具体的な表現にしていくことが望まれます。
コミュニケーションは、普段の生活や、人とのやり取りの中で、当然身に付いていくものと思われがちですが、そうではありません。基本的なスキルを知って、それを実際に使い、精度を高めていく、日々のトレーニングが必要なのです。そして、場数を踏めば誰でもスキルアップできます。
私は、介護職員の方々向けに「対人援助職のためのコミュニケーション入門」というテーマの研修を長年実施していますが、定期的に実施してくださっている事業所の離職率は、確実に下がっています。「新しい人は増えましたが、それ以外の顔ぶれは前の研修とほぼ同じです」という言葉を聞くと、本当にうれしく思います。
社会貢献や人のサポートができる介護の仕事にせっかくやりがいをもって取り組んでいるのに、職場の人間関係が理由で会社を去る人が多いのであれば、それは利用する側にとっても不幸なことです。1人でも多くの現場の方がよりよいコミュニケーション術を身に付けてくださることを望みます。
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