「働かないおじさん」だって、心底悩んでいる 中高年が企業に囚われる悲劇

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

為末:ちょっと貢いでいる状態があるから、辞めどきを引っ張らないと回収できなくなるわけですね。

中原:そうなんです。しかし、昨今は、これが維持できなくなっている。右肩上がりの賃金カーブを維持できないので、あとになって「過払いの状況」をつくるのが難しいんですよ。実際、子育て世代の給与は上がるどころか、逆に下がっていっているのです。これは非正規キャリアが浸透しつつあることもありますが、もう年配になって過払い状態の高い給与を維持していくことは期待できないということも一因のひとつかと思います。

同一労働同一賃金の延長線上に

為末:昨今は給与はどんな考え方になっているのですか?

中原:ペイ・フォー・パフォーマンスという考え方が注目されていますね。支払い(ペイ)を生産性(パフォーマンス)に同期させる、という考え方になりますので、生産性と賃金とを同じくするということですね。

為末:同一労働同一賃金というのは、いわばこういう考え方ですよね。

中原:その延長線上にあるとも考えられます。同一労働同一賃金は雇用の形態による賃金格差をなくすという話です。今は同じ仕事をやっているのに、単に雇用形態が違うというだけで、賃金と待遇が異なっているケースがありますから。ペイ・フォー・パフォーマンスの原則ではそれは同じになるはずです。

為末:なるほど。

中原:今、日本は、「ホステージ理論の世界」と「ペイ・フォー・パフォーマンスの世界」のあいだを揺れていますね。「ホステージ理論の世界」にはもはや安住してはいられない。とはいえ、「ペイ・フォー・パフォーマンスの世界」は、仕事の生産性が落ちれば、すぐに賃金に反映される世界なので、厳しいことは厳しい。じゃあ、どこに、いわゆる「落としどころ」を持っていくか、という議論ですね。

為末:確かに、いい人にはいいけど、厳しい人には厳しいですよね。

中原:そうなんです。だからおいそれとそちらの世界にもいけない。確かにとりわけ若い世代においては「ホステージ理論の世界」に納得できない気持ちはわかる。若い会社員の人たちは、このまま単線エスカレーターに乗っていても、下り坂になって昔と同じように賃金が支払われない可能性が高いのに、同じパフォーマンスを求められるのは割に合わないと考えます。もうごまかしようのないところまで来ているんですね。さらに、これからの人生は、「組織のなかで過ごす人生(組織人生)」よりも、「自分の仕事人生(組織によらず仕事をしていきながら暮らす人生)」が長くなることが予想される。だから、じり貧に追い込まれる前に、35歳や40歳のうちに、45歳とか55歳とかよりも、もっと前もってやれることはあるのではないかと考えるはずです。

為末:皮肉ですね。

次ページ年金も、国任せで大丈夫?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事