「働かないおじさん」だって、心底悩んでいる

中高年が企業に囚われる悲劇

中原:現段階だとそうだと思います。そして、今まさに、変化の真っただ中にあると考えられます。苦労して「モデルなき模索」を行っているという感じですね。

為末:「理由なく給与が落ちる」というのは反対に考えると、なぜ給与が理由なく上がっていたのかともいえますよね。建て前としては、給料を出す価値が上がっていたから、年齢とともに給料もあがっていたんでしょうけど。

中原:おっしゃるとおりです。戦後、ないしは高度経済成長の時期というのは、国内に大量に人口がおり、消費が活発化していた時期です。戦後の焼け野原においては、ものをつくればつくるだけ売れる時代がありました。また、1980年代は、自動車や製造業が商品を高度化させ、大量に輸出を行うことができました。要するに、つくればつくるだけ売れ、右肩上がりで膨らんだ時代なのです。だから、給与も、右肩上がりにすることができた。たまたま「整合性」が保たれていたんですね。「ついて」たんです(笑)。でも、今、それを維持することが難しくなっています。

生産性と賃金とは比例しない

為末:ところで不思議で仕方がないのですけれども、一般に人は、年齢が上がれば、パフォーマンスを出せなくなりますよね。アスリートの場合はそうです。なのに、年齢が上がれば、上がるほど給与が高いというのはどうしてなんでしょうか。

中原:かつての日本企業の年齢と給与の関係はこんなグラフで表現できます。

これは、生産性のカーブと賃金のカーブが交差する「ホステージ理論」といいます。日本企業では、従業員は最初は生産性が高く、それが賃金を上回ります。しかし、年齢を重ねていくと、今度は生産性が低くなり、賃金が過払いの状況になります。

これは働く人のキャリア設計にとっては、実は、「やさしいモデル」なんです。だって、若い頃には、あまりおカネは入り用ではないですが、年齢が上がると、子どもが生まれ、家庭をもつ。そうすると、おカネが必要になりますよね。そのときに、かつて生産性が高くても、賃金をもらっていなかった時代の給与を、もらうわけですね。しかし、代償も生まれます。あとで賃金をもらわなくてはならないから、ひとつの組織にホステージ(囚われの状態)になってしまうということです。だって、転職してしまって、外に出てしまったら、賃金を取りっぱぐれる状況になってしまいます。

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