「父になる」瞬間を大事にしない残念な日本人 妻の出産で休むのが男の育児の重要な一歩だ
今日は父の日。子どもから父親にプレゼントを渡したり、感謝の言葉をかけたりという光景がたくさんの家庭で見られるはずだ。
そんな父親のうち、わが子の出産に立ち会ったという経験のある人はどれぐらいいるだろうか。日ごろ出産現場で撮りためてきた写真を動画に夫たちの写真を動画にしたところ、この時の男性たちは本当にいい顔をしていた。日ごろは家事分担などでもめることもあるだろうが、2人の間に子どもが生まれてくるとき、男と女は何とうれしそうな顔をするのだろうか。
しかし、出産の場によく出入りをしていると、こうして夫婦でわが子を迎えられる人ばかりではない。どういうわけか、その時期に出張を命じられる父親がいたりする。「夫がいる間に生まれて」という産婦の願いが届かず、夜が明けたら、陣痛中の妻の手をふりほどいて出勤していった夫もいた。今日の産科は人が足りないので、夫がいなければたったひとりで陣痛に耐える女性も多い。退院の日、迎えに来られる家族がいなくて、赤ちゃんと2人だけで帰っていった母親の寂しそうな顔も忘れられない。
日本男性の名誉挽回のために休むワケではない
ほとんどの母親にとって、出産前後の時期は、最も夫にそばにいてほしい時だろう。昨年末、「国家公務員の父親は全員産休を取るように」にと言った安倍晋三首相はそれを日本男性の名誉挽回といったが、本人たちは男女共同参画社会の実現や少子化挽回のためにそうするわけではない。ただ、2人の子どもなのだから一緒にいたいだけだ。
ベネッセ教育総合研究所が首都圏の父親を対象におこなった「乳幼児の父親についての調査」によると、出産前後に有給休暇や会社の定める育児や配偶者の出産にかかわる休暇制度などを利用するなど、何らかの形で休暇を取った夫は、全体の半数(51.5パーセント)だった。逆に言うと、妻が命をかけてわが子を産むその時期に半数近くの男性が仕事を休んでいない。
父親たちにとって、わが子を一緒に迎えることは妻への「協力」ではないだろう。出産の場にいる男性は、自分自身が、ただの男性から父親になるという人生の一大事を経験する。
私が初めて出産の場にいる男性のただならぬ様子を目にしたのは、とある病院で、若い父親が赤ちゃんから目を離せなくなってしまったのを見たときだ。病院では新生児は別の部屋で体重を計るが、その父親は赤ちゃんとヒモで結ばれてしまったかのように、赤ちゃんがどこに行ってもぴったりとついて行った。わが子以外には何も目に入らなくなった、あの若い男性の表情は今でも忘れられない。
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