「父になる」瞬間を大事にしない残念な日本人 妻の出産で休むのが男の育児の重要な一歩だ

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フランスと日本には父親の出産にかかわる休暇制度で大きな違いがある(撮影:河合 蘭)

高崎順子氏の著書『フランスは少子化をどう克服したか』(新潮新書)によると、フランスでも、男女の別なく子どもが2歳になるまでに取得する権利がある「育児休暇」を男性が取得している率は、何とわずか2パーセント。育児休暇というものをこのように正確に見つめてみれば、日本とフランスは同等だと言うから驚く。

ではフランスの父親たちがどのように休んでいるのかというと、まず出産後3日間の「出産有給休暇」がある。その後には、11日間続く「子供の受け入れおよび父親休暇」という2種類の休暇を使える。これは男性が父親になるための休暇と位置付けられ、ここで父親たちを教育することはフランスの助産師たちの大変重要な任務とされている。これらの休暇は、与えないと雇い主に罰金、罰則がある。前者の取得率はほぼ100パーセントで、後者は自営業主が時間の調整でやりくりするため9割程度となっている。

「赤ちゃんと知り合うための期間」が肝要

高崎氏はこの本の第1章「男を2週間で父親にする」の結びで、フランスの父親育休について「フランスの父親たちが育児に参加するようになった転換点はまさにこの産休制度、3日プラス11日間の父親産休の導入」と書いている。「『赤ちゃんと知り合うための期間』を与えられた世代以降の男性たちは、明らかに、主体的に育児をする父親として目覚めています」

父親たちに贈りたいのは、自分は家族をもって本当によかったと、ゆっくり喜びや幸福を感じながら家族と共に過ごす「時間」である。日本には、父親が一緒に入院できるベッドを備え付けたり、動画にあるような父親が付き添える帝王切開手術を行っていたりする病院もある。大変な人手不足の中、家族のきずなのために手間暇をかけている出産施設に出会うと頭が下がる。

産休とは、長期の育児休暇が取れない男性の「セカンドベスト」ではない。父親にとって最も大切な休暇なのだ。「2020年までに出産直後の休暇取得率を80%」と言わず、むしろ100%を目指してほしいぐらいである。

河合 蘭 出産ジャーナリスト

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かわい らん / Ran Kawai

出産ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。カメラマンとして活動後、1986年より出産に関する執筆活動を開始。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院等の非常勤講師も務める。著書に『未妊―「産む」と決められない』(NHK出版)、『卵子老化の真実』(文春新書)など多数。2016年『出生前診断』(朝日新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。

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