「父になる」瞬間を大事にしない残念な日本人

妻の出産で休むのが男の育児の重要な一歩だ

出産に立ち会い、わが子以外には何も目に入らなくなる夫は少なくない(撮影:河合 蘭)

ひとたび子どもに夢中になってしまった父親たちは、赤ちゃんをさわりたくて仕方なくなる。ある男性は、日中、何度も仕事を抜け出しては産院に来ていた。ごくわずかの時間しかいられないのに、来ては子どもを嬉しそうに抱き、また仕事に戻っていった。

いろいろな男性がいることは事実だが、産院で、たくさんの男性がとてもうれしそうにわが子を抱いているのを見ると、今、日本の男性がもっと子育てをするために必要なのは、こんな「喜び」の時間をたっぷり楽しんでもらうことではないかと思われてくる。

出産前後の休暇取得には取り組めてこなかった

どういうわけか日本では、育児にかかわる父親の休暇について長期休暇の奨励が先行した。いわゆる「イクメン」と称され育児にとても積極的な男性、妻の社会的活躍のため専業主夫となり、長期にわたって育児に専念する男性の姿などをよく報じてきた。

もちろん男女はどちらが働いてもよく、各家庭が自分たちの事情に合わせたスタイルが選択できる社会になれば望ましい。しかし、日本の父親政策が、出産前後の休暇取得という、より基本的で普遍的なニーズの達成になかなか取り組めてこなかったのは一体なぜだったのだろう。

ようやく2015年になって、内閣府は「第三次少子化社会対策大綱」に「2020年までに出産直後の休暇取得率を80%にする」という文言を盛り込んだ。そのためのキャンペーンとして当時作成された「さんきゅうパパ準備BOOK」では「長い休みはとれないという方も、まずは3日、休暇を取ることを目標にしてみてください」とある。

そして、昨年末に示された安倍首相の「国家公務員の父親は必ず産休を」という掛け声のもと、霞が関では本格的な取り組みが始まっている。

ここでいう「出産前後の休暇」「産休」とは、ずっとわずか2パーセント台にとどまり今年の速報でやっと3パーセント台に乗った「育児休暇」とは違い、年次有給休暇など育児休暇以外の制度を使った休みも含む。

前出のベネッセ教育総合研究所の調査によると、出産後8週間のあいだの夫の休暇取得率は目下のところ47.1%。達成度は目標の6割程度というところだ。

産休は短いので、本当の育休のまねごとのように言われることもある。しかし、この時期の特殊性を考えれば、必ずしもそうはいえないだろう。海外に目を向けても、父親たちがそんなに長い休暇を取っている国は少なく、出産直後の休暇が重視されているようだ。

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