夜の山道30kmに挑む「名門男子校」の独特授業

東京・巣鴨は「大菩薩峠越え」で生徒を育てる

大菩薩峠の頂上。四十路でも何とか登りきれた(写真:筆者提供)

大菩薩峠に到着したのは6時45分。われながらなかなかのペースである。峠には山荘があり、軽食や飲み物を買える。売店は長蛇の列だ。そこでカップラーメンを食べるのが「お約束」なのだそうだ。私は持参したカロリーメイトをほおばった。

15分ほど休憩して、山を下ることにした。下りのほうが傾斜は緩やかだと聞いた。いやしかし、ひざの関節がすでにきしんでいる。一歩一歩に痛みを感じる。当然筋肉も疲れているので、ちょっとした木の根に足を取られただけでもうまくバランスが取れず、転びそうになる。やれやれだ。

ほとんど全行程を走り抜いてしまう生徒も

そんな私を、先ほどまで峠でカップラーメンを食べていた中学生たちが、どんどん追い抜いていく。ほとんど駆け下りるように、下っていく。

「君たちひざとか痛くないの?」

「痛いですけど、大丈夫です」

峠を越えて気が楽になったのだろうか、それともあのカップラーメンに魔法の力でもあるのだろうか。先ほどまで泣きべそのような顔をしていた中学生たちが見事に気持ちを持ち直しているのである。

「60/60」の地蔵小屋に到着したのは9時過ぎ。目安どおりのペースである。しかし、そこからゴールまではまだ8kmほどある。すでに太陽は高い。

塩山の町中にだいぶ近づいてきたところに、旗を振りながら道順を案内するボランティアスタッフが立っていた。

「あと何キロくらいですか?」

「あと2キロくらいですよ」

「え、まだ2キロも残ってるんですか? あと1キロくらいかと思ったのに……」

「お兄さんは何時からここで立ってるんですか?」

「5時くらいからです。速い人はそれくらいにここまで来るので」

「え? 5時にもうここまで来る生徒がいるんですか? 今日、いちばん速かった人は何時にここを通過しました?」

「最初の高1は5時20分くらいでした。ほとんど走ってましたよ」

信じられない……。ここまで25kmの道のり、それも1900mの峠を越える山道を、3時間弱で駆け抜けたというのだ。あとで聞けば、陸上部の長距離選手とのこと。なるほどだ。

次ページ一歩一歩を重ねることで踏破できる
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