夜の山道30kmに挑む「名門男子校」の独特授業

東京・巣鴨は「大菩薩峠越え」で生徒を育てる

寒い。辺りは真っ暗。生徒たちは全員ヘッドライトを着用している。本格的な山道が始まる赤沢の登山口まで約5kmは舗装された道を行く。それでも山道に変わりはない。勾配は急で少しペースを上げすぎると途端に息が切れる。リュックの中からときどき水筒を取り出して水分を補給する。

4時20分ごろに赤沢の登山口を通過したときにはかすかに夜が明けようとしていた。しかし足元はまだ暗い。先を行く生徒たちのヘッドライトの列が、闇に隠れた目の前の山の勾配を物語る。ほとんど真上に登っているように見える。

どのあたりが、いちばんつらいのか

赤沢を通過してすぐ。険しい登山道の脇に、ピンク色の立て看板があった。「1/60 巣鴨学園」。本格的な登山道を登り始めてから下るまでの全行程を60分割して、そこがどの地点なのかを知らせる標識だ。「30/60」が峠である。いちばんつらいのは「23/60」とか「24/60」くらいだろうか。そんな余計な想像が頭をめぐる。

登山道の各要所には大会運営スタッフが待機している。道順案内をし、生徒たちが安全に登山しているかを見守り、励ます。無線機を持って本部と連絡を取り合う係もいる。山岳部、科学技術部、および卒業生のボランティアスタッフだ。このために前日から山に入り、完全な暗闇の中で生徒たちがやってくるのをじっと待っていたのだ。

当然だが、山中にベンチやトイレ、水道などはない。疲れたら登山道脇の切り株などに腰をかけ、持ってきた軽食を口にしたり、水を飲んだりする。お菓子を食べている中学生も多い。カロリー補給のあめ玉やチョコレートならわかる。しかし結構な割合でスナック菓子を食べている光景を目にする。のどが渇かないのだろうか。胃がもたれないのだろうか。四十路を過ぎた私には到底無理だ。

予想は当たっていた。「20/60」を過ぎたあたりから、かなりしんどくなってきた。標高も影響しているだろう。数百メートル進んでは一休み。それを繰り返す。

この頃になるとさすがの中学生もしんどいようだ。疲れ切った表情で、道端でうずくまる生徒も見掛ける。ぶつくさ文句を言いながら歩く生徒もいる。頂上が近くなるにつれ、私が中学生を追い抜くケースが増えた。そこは年の功。精神的につらくなったときに気持ちをコントロールするすべを、中学生よりは知っている。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。