キャリアと出産、「両立」のための唯一のコツ

時期を「意図的にズラす」ことが必要だ

重要なのは、現在の選択肢(たとえば今の会社に残り正社員になるという選択)がキャリアにおける最終的な選択肢やゴールではなく、「その次」に行くための戦略的な選択であるということを理解する、という部分です。次にスムーズに行くための期間限定の選択とも言えるでしょう。

おはぎさんは今回の転職活動を通じて、「武器となるような経験やスキルがない」ということを実らなかった理由として挙げられています。実際はわかりませんが、おそらくそうだと仮定すると、この武器となるスキルは、実務経験と勉学の2つに分けて考えることが可能です。

たとえば、結婚出産までは今の会社で正社員として登用され、派遣社員としての現在の業務範囲以上のことを実務経験として成し遂げる努力をし、出産休暇中に(大変なのは百も承知なので軽い気持ちで言っているわけでは決してありませんが)業務に関連する資格試験勉強に励んでみる、などです。

どこまで通用するかの保証は当然ありませんが、そのコースであれば正社員というステイタスを手に入れることはもちろんのこと、客観的にも「派遣社員として入社した会社で正社員に登用された事実=仕事を評価された事実」という武器が手に入りますし、「出産休暇中にもスキル取得に励むモチベーションの高い人材である=スキルのアップデートもきちんとされている」という武器も手に入ります。したがって、「その先」に転職先に正社員として登用される可能性は少なくとも現状よりはアップするでしょう。

リスクを取る時期と人生のイベントを「ズラす」

現在の会社がおはぎさんにとって意に沿わないことは理解しています。が、現実的に今の時点で転職というリスクと人生のイベントが「同じ時期に重なった場合」、どこまで対応できるかは不明でしょうし、一般的にリスクは高いでしょう。キャリア上でリスクを取る時期と人生の重要イベントを「意図的にズラす」ということも大いに考えるべきだと思うのです。

繰り返しですが、たとえ今の会社に残るという選択をしたとしても、それが最後の選択=ゴールではなく、最終的に目指す姿を実現するための「現時点での手段」である、ということを忘れるべきではありません。

私たちは一般的に現状を変えたいと思ったら、転職などのわかりやすい行動に走りがちです。ただし、将来変わるために、現状を意図的に大きくは変えずに、できる範囲で対応をしてみる、という選択肢も大いに考えるべきだと思うのです。

もちろん前提は、今のままの業務範囲とやり方を継続するだけではなく、できる範囲で業務の幅も深さも広げてみる、ということです。変われる部分は大いに変えて、今変えるべきでない部分は変えない、という考え方です。

本連載や拙著『99.9%の人間関係はいらない』(中公新書ラクレ)などで、「ワークとライフのバランスを取るのはいっぺんに目指すべきことではなく、ある程度の時間軸で最終的に達成することを考えるべし」と私は繰り返し述べております。

今回もそのような考えに基づき、「ゴールの意図的な分散」により、その時々で努力する対象を絞り、自分自身の「エネルギーの集中」により確実な達成を目指す、という例を挙げさせていただきました。ただ、上記はあくまでも例であり、最終的にはおはぎさんがどういった姿をどのような時間軸で達成したいかにより、手段は変わってきます。

とはいえ、考え方は参考になると思います。おはぎさんが焦らず、着実にご自身が理想とする人生のゴールに向かって1歩ずつ歩まれることを応援しております。

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