一流の経営者は「経営理論」を振りかざない

「参考にしても信用はしない」が正しい常識

「経営は、数字の分析や、理論などではない」――。これは松下さんから学んだことです。経営とは「理3、情7」が基本の基本です。理屈で経営が成功する、数字の分析で会社が発展するということならば、学者、評論家が経営者になればいいのです。しかし、「情7」こそが大事なのです。極端に言えば、「理3」を無視しても「情7」によって経営に成功することはできるのです。

実際、松下さんが「松下電器が成功した9つの要因」を挙げています。この話は、私の著作でも講演でもしばしば書き、またお話ししていますので、多くの方々がご承知だと思いますが、その9つの要因は、1. 自分が凡人であったこと、2. 人材に恵まれたこと、3. 方針を明確に提示したこと、4. 理想を掲げたこと、5. 時代に合った事業であったこと、6. 派閥をつくらなかったこと、7. ガラス張りの経営をしたこと、8. 全員経営をしたこと、9. 公の仕事であると訴えたことと述べています。

この、成功の9要因のなかに、数字や理論に関する事項はありません。経営分析もなければ、有名な経営理論から活用したようなものもありません。

会社とは「人間の集合体」。経営とは、集まった人間の「相乗行動」によって1つの目的に向かって進み、その目標を達成することなのです。経営は、したがって、いかに「人間の集合体」を治めるか、活かすか、やる気を出させるかに要諦があるのです。実際のところ、松下さんが語った9つの成功要因を、ひと言で表せば、「私が経営において成功したのは、社員を励まし、社員に誇りを持たせ、社員に感謝し、社員に感動を与えたからです」ということでしょう。

「働き方改革」で必要なこととは?

近頃、「働き方改革」が話題になっています。政府も「働き方改革実現会議」を設置して、いかに生産性を向上させるか、1億総活躍社会の実現に向けて、企業や暮らし方の文化を変える必要があるということですが、結局は、堺屋太一氏の言う「夢ない、欲ない、やる気ない」を、いかに解消するかということでしょう。

そのためには、数字や理屈は、ほとんど必要ないということです。この会議が「情7」を前提にして「人間」「日本人の精神」を論じないかぎり、「机上の空論」「絵に描いた餅」に終わりかねません。夏炉冬扇の会議を続けていては、「働き方改革」にしろ「プレミアムフライデー」にしろ、いつの間にかフェードアウトする可能性があります。

要は、経営者もビジネスマンも、「情7」を前提に、人心掌握に取り組み、しかる後、もし余った時間があれば、経営分析でも、理論でもお勉強すればいいのです。繰り返しになりますが、経営において、経営分析や経営理論は、必ずしも必要条件ではないのです。

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