モスクワ世界陸上の日本代表は、木﨑良子(ダイハツ)、野口みずき(シスメックス)、福士加代子(ワコール)の3人。代表選考レースのタイムは2時間23~24分台で、ケニアとエチオピア勢が2時間18~21分台の自己ベストを持っていることを考えると、実力でのメダル獲得は現実的ではない。かといって、男子のような大胆な「入賞狙い」をするほど実力差があるわけではなく、作戦の立て方が難しい。
それでも日本代表選手は米国ボルダーで5月末からおよそ1カ月、野口と福士がほぼ同じトレーニング(木﨑も最後の数日合流)を行い、所属の違う選手が「チーム・ジャパン」として強化を図り、互いの実力を確認してきた。日本勢は“情報”を共有することで、本番での不要な日本人同士の争いを回避。レース展開によってはチームプレーを発揮することができるだろう。
箱根のスターも登場、男子1万mの「戦い方」
マラソンだけでなく、トラックの1万mでも日本と世界との差は歴然としている。男子では世界記録が26分17秒53に対して、日本記録は27分35秒09と1分20秒近い実力差がある。テグ世界陸上とロンドン五輪には学生時代から数々の記録を打ち立ててきた佐藤悠基(日清食品グループ)が出場したが、ペースの上げ下げが連続するレースに大苦戦。2度とも周回遅れを喫している。
今回のモスクワ世界陸上には佐藤、大迫傑(早大)、宇賀地強(コニカミノルタ)という箱根駅伝のスター選手たちが出場予定。3度目の世界挑戦となる佐藤は“秘策”を考えている。
「世界との実力差がありますし、国際大会の揺さぶりに対応するのは難しい。周囲に合わせるのではなく、自分たちの長所を生かすような走りができれば面白いと思います。できれば、日本代表3人で協力して、交代しながらイーブンペースでレースを進めたい」(佐藤)。
ロンドン五輪の1万m入賞ライン(8位)は27分36秒34で、佐藤、大迫、宇賀地のベスト記録は27分38~40秒台。本番で自己ベストに近いタイムを出すことができれば、入賞ラインに近づける可能性があるわけだ。
実はこの作戦、昨年のロンドン五輪の女子1万mで日本勢が見せたスタイルに近い。極端なペース変化を警戒して、吉川美香、福士加代子、新谷仁美(ユニバーサルエンターテインメント)の3人が序盤でトップ集団を形成。3人が縦に並び、1000mごとに引っ張って、イーブンペースに持ち込んだ。4400m付近でケニア勢にトップを奪われたものの、その後も新谷が粘って9位と健闘している。なお、今回の女子1万m代表は新谷のみ。完全なる個人戦となるがどんなレースを見せるのか。
大会初日の8月10日に女子マラソンと男子1万mが行われ、女子1万mは8月11日、男子マラソンは大会最終日の8月17日。チーム・ジャパンの戦略を知っておくと、テレビ観戦がもっと楽しくなるはずだ。そして、個々のビジネスでも、ターゲットへ確実に近づく方法を考えるきっかけとしてほしいと思う。
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