※ 対談(上)はこちら:ラグビーが好きでない、ラグビーの名監督
選手に自覚が生まれるまでひたすら待つ
楠木:学生たちは、それまで中竹さんのような指導を受けてこなかったわけですよね。「自主性に任せて……」というやり方は、言うのは簡単ですが、実際に実行して成功するとなるとこれほど難しいことはない。どうやって、学生たちに理解させていったのですか。
中竹:なかなか受け入れられませんでした。最初の頃、練習をしていると、学生から「つまんないな、この練習」とか、ボソッと聞こえてきたりするんです。それで、ミーティングのときに、「どんな練習をすればいいのか、みんなで考えよう」と言うと、「それを考えるのが監督の仕事でしょ」とか言われたり(笑)。選手としては、監督に決めてほしい、命じてほしいというわけです。
楠木:中竹さんは、トップダウンではない。でも、伝統的な意味での「ボトムアップ」でもない。ボトムアップというと、調整型とか、そういうイメージですけど、それとはだいぶ違う。
中竹:私はプラネット(惑星)型と呼んでいます。選手と指導者がフラットにアメーバ状につながっているイメージですね。私自身が、人に命令するのも嫌いですし、人から命令されるのもイヤなので。とにかく自主的に考えてもらうことを目指しました。
楠木:そうした中竹さんの指導方針は、どのくらいで学生たちに受け入れられるようになったのですか。
中竹:半年くらいでしょうか。当初は、思うような結果が出せず、監督が悪い、コーチが悪いと言っていた学生が、文句ばかり言っていても、このままいったら試合に勝てない、と気づくようになる。すると、「自分たちで考えていかないとダメなんだ」と思うようになるわけです。そういうプロセスを経ることで、本当の理解に到達してくれる。もともと、優秀な選手たちですから。
楠木:でも、理解されるまでの、学生からの不信感に耐えつつ、その状態を維持するというのは、並大抵ではないですよね。
中竹:責任を取ることを引き受けて、最終的には自分がやっていることを続けていればよくなるんだ、というマインドセットをしっかりとしておきます。もともと、何事にもじっくりと取り組むのが好きなのです。
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