まずリーダーが「好き・嫌い」で本音を語れ

コーチングディレクター、中竹竜二氏の好き嫌い(下)

若い世代のコーチは共感

中竹:練習や試合において、リーダーに頼らず、まずは自分で何をすべきかを考える選手を育てる、というのが指導方針であることはお話しました。私は、それを「フォロワーシップ」と呼んでいます。リーダーの周りにいるフォロワーたちが自主性を持って組織を支えていくというラグビーです。コーチングディレクターとして、このフォロワーシップをコーチたちに教えると、学生たちと同様、最初は戸惑います。

中竹竜二(なかたけ・りゅうじ) 日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター 1973 年福岡県生まれ。福岡県立東筑高等学校では同校ラグビー部主将を務める。1993年、早稲田大学人間科学部入学。大学在籍時はラグビー部に所属し、4年次 に主将に選出される。1997年に卒業後、英国留学。レスター大学大学院社会学部修了。2001年、三菱総合研究所に入社し、コンサルタントとして従事。 2006年、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。2007、08年度全国大学選手権2連覇に導く。2010年より現職。2012年よりU-20日本代表 コーチも兼務。主な著書に『監督に期待するな』(講談社)、『判断と決断』(東洋経済新報社)、『鈍足だったら速く走るな』(経済界)などがある。

楠木:コーチにとっても初めて聞く指導方法であると。

中竹:はい。よく、指導用のマニュアルをくださいと言われるのですが、「マニュアルはありません。みんなで作りましょう」と言って、そこから始めます。コーチたちにも自主的に考えてもらいたいのです。でも、若い世代のコーチたちほど、リーダーはリーダーシップを示さなくてもいいし、指導のために怒ったりする必要もないということがわかってくると、ホッとしているんですよ。キャラ的に威厳を発することができない人が結構いるのです、私のような(笑)。そういうコーチたちは、フォロワーシップを知って、自分のやり方でやっていいんだということに気づくのです。

楠木:中竹さんは怒鳴ったりすることはないんですか?

中竹:ありませんね。ほかのコーチや選手に怒鳴られることはあっても(笑)。

楠木:フォロワーシップという考え方は、言葉で聞くと、たしかにそれが正しいのだろうな、とは思いますが、トップレベルのラグビーのチームというハードな組織でそれを実行できるかというと、実際はそうとう難しいと思います。

本音を言い合える場を作る

中竹:組織において、フォロワーシップを実現するにあたってポイントがあります。それは、メンバー同士が本音を言い合える関係であるかどうかです。本音を言える場を作る努力はしますね。

楠木:建前は嫌いですか?

中竹:大嫌いです。私自身、本音が言えない場がイヤです。よく、本音を言った人に対して、「空気読んでない」と責める人がいますが、私は空気を読まずに本音を言う人が好きですし、自分もそうだと思っています。

楠木:具体的に本音が言い合える場というのは、どのように作っていくのですか?

中竹:まずはリーダーが本音を言うことですね。監督になった1年目にこんなことがあったんです。早稲田大学の最大のライバルは関東学院大でした。年に3回練習試合をすることになっていまして、夏の合宿中にそのうちの1回が行われます。両校ともレギュラーの1軍以外に6軍まであるのですが、そのうち1軍から4軍同士が行われます。

楠木:6軍まであるという話だけで驚きですね。

中竹:そうなんです。それで、試合をする段になり、円陣に近づくと、選手たちは泣いていたのです。ライバル校との試合であるため、感極まってということなのでしょうが、私はその光景を見て、すごい違和感を持ったのです。大学選手権の決勝ならいざ知らず、単なる合宿中の練習試合の前に泣くのかよと(笑)。そのときは何も言わなかったのですが、試合後のミーティングのときに、私はそういうのが嫌いだと、はっきり言ったのです。

楠木:学生の反応はどうでした?

中竹:非難ごうごうです(笑)。感極まって泣くのがラグビーじゃないのかといった感じで。でも、私はもったいない感じがしたのです。もっと冷静になって試合をしたほうが有益だろうと。体育会特有の気合いを入れたりとか、緊張状態を作り出すことは、普段の力が出せなくなる余計なことではないかと思います。

楠木:それ以降の練習試合ではどうなったのですか?

中竹:試合前に泣くことはなくなりました(笑)。私の発言はさんざん誹謗中傷を受けましたけど、「この人は本音を言っているな」ということは学生たちには伝わったんですね。

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