まずリーダーが「好き・嫌い」で本音を語れ コーチングディレクター、中竹竜二氏の好き嫌い(下)

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まずリーダーが「好き・嫌い」で本音を語る

楠木:ビジネスの世界を見ても、本音を言い合える場というのはなかなかありませんよね。「今日は無礼講だから」なんていう前置きが出るようなときは、まず、本音をしゃべる人は出てこないものです(笑)。

中竹:まず、そういうセリフを言うリーダーが、腹を割って本音を言わないとダメです。選手一人ひとりと個人面談をしたときは、相手に向かって、「○○のこと嫌いだろう?」って、コーチやほかの選手の名前を出すんです。適当に名前を出すのではなく、普段の練習などを注意深く観察した結果です。そして、自分も○○が嫌いだとか本音を言います。すると、自然と学生も本音でしゃべってくれます。好き嫌いの話って、本音を引き出すのに有効なのです。

私は、選手選考のときでも、「○○はうまいけど身体を張らないから嫌いなんだ」と、好き嫌いで選手を選びます。おそらく、選手選考は実力本位で選ぶべきだという大きな建前があり、実際は好き嫌いで選んでいるにもかかわらず、それを口にするのはタブーとされてきたと思います。でも、ほかのコーチに対して、選考の理由を好き嫌いで説明します。するとコーチたちも好き嫌いを言い出します。そういうやり取りを経て、最初は単なる「グループ」だったものが、濃い関係の「チーム」になっていくと思います。

楠木:指導者が偉そうにしていたら、いつまでもそういう組織にはならないというわけですね。

中竹:率直にお互いをぶつけ合う関係になっていないと、試合中、仲間を助けたり助けられたりと、臨機応変に対応することはできないのではないでしょうか。トップダウン型の指導者ほど、試合が接戦になってくると動揺してしまうのです。それは、見ていてわかりますよ。

休日は休憩と考えごとにふける

楠木:休みの日は何をなさっていますか。スポーツなどは?

中竹:仕事を離れてスポーツを楽しむことはないです。身体を動かすことは好きなのですが、デトックス程度に運動するくらいで。休みの日は、主に休憩と考えごとです。

楠木:どんな場所で考えごとをされるのですか。

中竹:カフェですね。昔は嫌いだったのですが、今は、カフェでボーッと考え事をするのが好きになりました。ただ、騒がしいところは苦手ですね。

楠木:のめり込んでいる趣味はありますか。

中竹:以前は料理が好きでした。特に、イギリスに留学したときは料理ばかりしていて、周りの人からは、料理をやりに留学に来たのかって言われていました(笑)。

楠木:どんな料理を作っていたのですか?

中竹:あらかじめ、これを作ろうと決めるのではなく、その日にマーケットで買ったものを使って料理する、という感じです。だから、買い物をすることがひとつの楽しみになっていました。

楠木:その過程を無理やり一般化すると、中竹さんは、自分のイメージしているものがあって、それを具体的な形にしていくことが好き、ということになるでしょうか。

中竹:確かに、定型化された作業レベルのことがあって、それをやらなければならない、となると、かなりつらいですね。

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