ベネズエラが国営石油会社PDVSAを通じ、トランプ米大統領の就任式に50万ドル(約5600万円)を寄付していた。いかにも皮肉なニュースだ。ベネズエラほど債務不履行を繰り返してきた国はないからである。
同国の独裁政権は、さらなる債務不履行を逃れようと必死だ。最近では、米国に拠点を置く精油企業シトゴなどの重要資産を担保に、ロシアと中国から融資を受けた。
国民を窮乏させてまで、マドゥロ大統領が対外債務返済にこだわる理由は判然としない。ルーマニアの独裁者チャウシェスク元大統領が1980年代に同様のことを行ったが、深刻な食糧難や医療の窮乏を招いた結果、革命軍の手で公開処刑された。ベネズエラも独裁政権が倒れれば、同様の惨事となるのは目に見えている。
トランプ大統領の就任式に寄付したような額を、はした金と呼べた時代は確かにあった。チャベス前大統領の下、ベネズエラはオイルマネーを使って、中南米の反米政権を広く支援していた。米国の低所得世帯の光熱費を援助していたことすらある。
石油価格が高騰していた頃は、経済政策の失敗から産油量が急減しても、国の歳入を維持できた。だが、ベネズエラが米国ほど豊かだったことは一度もない。
国民生活は一段と困窮
2013年にチャベス前大統領が死去して以降、石油価格は急落。後継者のマドゥロ大統領を取り巻く財政状況は厳しくなっている。
今のベネズエラ経済はボロボロだ。ハイパーインフレに近い状態の中、国民生活は一段と困窮している。このような状態になれば、軍事クーデターが起きてもおかしくない。同国でそれが起きないのは、軍部が麻薬ビジネスを取り仕切るのを政府が看過し、将校たちに甘い汁を吸わせているからだ。
経済危機にあえぐ国がトランプ大統領の就任パーティに資金援助したのは、いかにも奇妙だ。何百万人もの人が困窮している国からおカネを受け取るべきではない。
トランプ大統領は、オバマ前大統領がそうしたように、圧政には制裁を加えるという、超党派で支持された政策を受け継ぐべきだ。メキシコなどの中南米バッシングではなく、米国は賄賂などでは動かない規律ある友好国になれることを示していく必要がある。
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