鉱山と鉄鋼業界の力関係が完全に逆転! 価格交渉に歴史的異変

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鉱山開発加速するミタル 後手に回る新日鉄

市場創設に対する鉄鋼側の拒否反応は根強い。鉄鋼原料はサプライヤーが限られている以上、供給側に有利な価格操作が行われる懸念が残る。そこに投機資金が入れば、原料価格はさらに暴騰しかねない。

ただ一方で、市場創設の動きを前向きに評価する声も存在する。

日興シティグループ証券の城野俊之アナリストは「一部の鉱山会社と鉄鋼メーカーとの間で決められたスポット価格が基準になっている現状よりは望ましい。流動性さえ担保して、参加者が納得できるマーケットにすれば、正常に機能するはず」と期待を寄せる。

原料高騰の流れに、鉄鋼メーカーがさお差すことは容易ではない。残された数少ない策の一つが、自社鉱山からの調達を増やすという手だ。

世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)は、自社鉱山からの鉄鉱石調達比率がすでに46%(06年)に達している。目下、アフリカのリベリアとセネガルで32億ドルを投じ、大規模な鉄鉱山の開発計画が進行中。12年には自社鉱山からの調達比率を65%にまで高める目標を打ち出している。韓国最大手のポスコも北朝鮮からの鉄鉱石輸入を打診するなど、海外大手は豪州、ブラジル以外の原料ソース確保に奔走中だ。

日本企業も、新日鉄が今年2月に関連会社のウジミナス(ブラジル)を通じて現地鉄鉱山を買収するなど、鉱山投資を増やしている。ただ、「高値づかみで値崩れするリスクもあるし、鉱山に関するスキルも人材もない」(新日鉄首脳)というジレンマも抱える。目下の自社権益調達比率は35%止まりで、先行するミタルとの差は甚だ大きい。

日本に残された次善策は、国内の製品価格交渉の見直しだ。現在の鉄鋼メーカーと大口ユーザーとの交渉は年1回。しかも、海外で販売するよりも割安の価格で妥結している。顧客との長期的関係を重視するがゆえの、昔からの慣習だ。

だが、こうした硬直的な価格設定方法では、今起きている原料の急激な値動きにとても対応できない。「いつまでも1年契約を続けていないで、今こそ四半期ごとの改定に改めるべきだ」と城野氏。

原料・製品の両面で、透明な価格形成システムの整備を進め、直ちに移行すること。ポスト・ベンチマーク時代は、長期的関係に頼ってきた日本の鉄鋼メーカーに、旧時代との決別を迫っている。

(猪澤顕明 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)

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