松屋と吉野家の「超絶進化」に見る牛丼の未来 空前の人手不足に、両社が模索する「打開策」

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こうした取り組みをしているのは松屋だけではない。牛丼チェーン「吉野家」は2016年3月、恵比寿駅前店を改装し、新型店を実験的に出店した。松屋のセルフ式店舗と同様に、U字型カウンターはない。

人手不足の牛丼業界、新型店舗は定着するか

吉野家の恵比寿駅前店。通常店はオレンジの看板だが、ここは黒い吉野家だ(記者撮影)

通常の吉野家は食事後の会計だが、新型店ではまず注文口のレジで会計し、受取口で商品を受け取る。価格も同一と見られる。

実験の目的は、働き手の減少を見据えて、「女性・シニアが働きやすい店舗作り」を進めることだ。

客から見える部分だけではなく、炊飯器を小型にしたり、納戸の高さ・重さを変更したりと、厨房内も女性・シニアが働きやすい仕様に変更した。

メニューの選択肢は通常店よりも幅広い。ドリンクバー(150円)やケーキ(100円)のほか、揚げ物をつくるフライヤーを導入しているため、からあげ系のメニューもある。客席部分はカフェのようなつくりで、TVモニター、コンセントやWi-Fiをそなえている。1人客やカップル、女性2人連れが目立つ。

恵比寿駅前店のほかにも、現在までに柏東口店(千葉県)、大井町西口店(東京都)、川口柳崎店・川口上青木店(埼玉県)も同様の改装をおこなった。実験店では客数が2ケタ伸び、2割程度だった女性客比率は3割程度に上がったという。

会社側は「実験店では明らかに客層が拡大したので、地方でも実験する」と説明。今年の8月までに仙台、名古屋、大阪、福岡でも同様の店を実験出店する予定だ。

松屋、吉野家の新型店は顧客だけでなく働き手にもアピールする意味がありそうだ。牛丼業界は空前の人不足を受けて、新たな一手を模索している。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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