ギャンブルの様相呈する「不妊治療」の最前線 米国で増えるパッケージプランの実態
治療がうまくいくほど損をする?
現代の不妊治療技術の助けを借りて妊娠を試みることは、カジノでありったけのカネを賭けるのに似ている……こともある。そう、最近の米国の不妊治療クリニックでよく見掛けるパッケージプランの売り文句には要注意だ。
バージニア州リーズバーグに住むクリスティ・チェンバーズと夫のカールトンは、数回の流産の後、クリニックから提示されたパッケージプランを受け入れた。この料金プランは、5万ドル超の料金を払えば出産まで何回でも体外受精(IVF)を受けることができ、最終的に妊娠できなかった場合には全額を払い戻すというもの。金額的には1回のIVFに必要な料金よりも2万ドル以上、高く設定されている。
問題は、もし1回目のIVFで子どもができても返金はいっさいされないという点だ。実際、クリスティは1度のIVFで妊娠し、夫妻は大喜びした。男の子が誕生した後、夫妻は似たような料金プランを利用して、今度は双子を授かった。
「不妊治療カジノ」では、可能性の非常に低いシナリオにしばしばスポットライトが当てられる。つまり追加のIVFを無償で行うのと引き換えに、患者が損をする可能性が大きいプランが提示されるのだ。患者はお得に見える条件のために数万ドルというカネを支払う。そして待望の赤ちゃんを腕に抱くわけだが、同時に大金を「すっている」ことにもなりかねない。
勝者はもちろん、胴元……いやクリニックの側だ。医師(およびこうしたパッケージプランの管理を裏で支え、場合によっては経済的リスクを引き受ける第3者の企業)は患者たちのこれまでのデータを注意深く追っている。そして「オッズ」に合わせて利益が出る料金を設定する。