ギャンブルの様相呈する「不妊治療」の最前線

米国で増えるパッケージプランの実態

胴元は、治療の早期に妊娠する可能性が高い患者のみを選んで受け入れるという「いかさま」をやる。クリニックが成功を見込んで選んだ患者ということは取りも直さず、こんなパッケージプランに高いカネを払う必要がない人々だという可能性もあるわけだ。

「クリニックは患者の成功に賭け、患者は自分の失敗に賭けるというわけだ」と、ピッツバーグに住むサラ・バークは言う。バークもこの手のパッケージプランを利用して子どもを授かった。

恩恵が受けられそうな人は対象外

米連邦政府にも不妊クリニックの治療実績に関する大まかなデータはある。だが今回、不妊治療に関する情報や医師に対する評価を公開している「ファティリティIQ」は記者の要望に応え、いくつかの追加データを集めてくれた。

「子どもが生まれなかったら返金する」という契約をクリニックと結んだ54人のうち、1回目の受精卵移植で成功したのは30人だった。また、採卵が1回で済んだ人は67%で、これはIVFを受けた米国の同年代の女性の出産率と比べて少なくとも20ポイント高い数字だ。

だが両者を比較しようにも、条件は必ずしも同じではない。

サンプル数が少ないことは念頭に置かなければならないが、ファティリティIQの創設者であるジェイク・アンダーソンとデボラ・ビアリスは、クリニックがIVFが成功する確率の高い患者をあえて選んでいると考えている。2人は夫婦で、不妊治療を経て子どもをもうけたが、医療関係者はハードルの高い患者を――つまり問題の程度が重かったり、年齢が高かったり、肥満度を示すBMI(ボディマス指数)が高いといった人々を締め出しているのではと指摘する。

アリゾナ州マラナに住むジョハンナ・ヘルナンデスがまさにそのケースだ。2回の流産や体外受精を経て、そうしたパッケージプランに申し込もうとしたが断られた。

「私たちが置かれているのは、先の見えない不安定な立場だ」と彼女は言う。「初めはこうしたプランが必要になるなんて知るよしもないし、結局のところ役立てることもできない」。

ヘルナンデス夫妻はパッケージではなく1回ごとに料金を支払う形で治療を受け、さらに1回の流産を経て男の子を授かった。

クリニック側がオッズを上げる手段はほかにもある。1回に移植する受精卵の数を増やすのだ。米生殖医学会は双子や三つ子の妊娠はリスクが高いことから、そうした処置には反対している。同学会は、複数回のIVFと妊娠に失敗した場合の返金を組み合わせたパッケージプラン(業界内では「リスク分散プラン」と呼ばれている)についても、こうしたリスクに警鐘を鳴らしている。

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